業務委託契約書とは?記載すべき内容や注意点・作成方法を徹底解説 | 税理士コンシェルジュ

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業務委託契約書とは?記載すべき内容や注意点・作成方法を徹底解説

2020年8月3日
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「業務委託契約書」は、事業を営む上で欠かすことができない契約書のひとつです。法人だけでなく、個人事業主やフリーランスでも業務委託契約書を作成する機会があります。この記事では、業務委託契約書とは何か、記載すべき内容、作成する際の注意点など、業務委託契約書について徹底解説していきます。

業務委託契約書とは?

業務委託所とは、業務を発注する側が、受注者となる企業や個人に対して、業務の実施を委託する旨を書面に記載した契約書のことです。業務計画書の内容に関しては、その名が付く、法律上の決まりは存在していません。

しかし、業務委託契約は、「請負」や「委任」などの契約に関して決められている民法に法的な根拠を持ちます。具体的には、民法第632条の「請負契約」や、民法第634条の「委任契約」が挙げられます。

業務委託契約を結んだ場合、発注者と受注者は対等になり、双方で依頼内容などを自由に決めることができます。ただし、業務委託契約を結んだのに双方の関係が対等でな場合は、法律に抵触してしまう可能性があります。

自由度が高いために有利な契約内容を作成することが出来る分、不利な内容になる可能性もあるため、契約を結ぶ際には注意が必要です。

業務委託契約書に記載する内容とは?

業務の委託者と受託者が結ぶ業務委託契約書には、業務内容やその範囲を具体的に特定して記載することが大切です。記載すべき内容と、具体的な記載例をみていきましょう。

①受託者と委託者の署名や名称

まず業務委託契約書には、受託者と委託者の名称を記載し、それぞれの署名欄を記載します。通常、名称の記載欄は、業務委託契約書の上部、署名欄は下部となっています。つまり、上部から正式名称、住所、代表取締役の氏名を、「甲」「乙」の順に記載します。

【記載例】
株式会社○○(以下「甲」という)は、株式会社○○(以下「乙」という)に対し、甲の○○業務における業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する。

②業務内容

業務内容や範囲に関して、具体的に特定して記載することは、後に生じるかもしれないトラブルを回避することにつながります。どのような業種で、受託者はどのようなことをするのかを記載します。業務内容をしっかり記載しておくなら、「依頼した仕事をしっかり果たしてもらえなかった・・」とか、「聞いていた内容と違う・・」などの状況に陥ることを避けることができます。

通常、業務委託契約書に業務内容を細かく記載することができなかった場合は、「関連業務並びに付随業務の一切を含むものとする」という条項を追加して記載することがビジネスマナーとなっています。また、想定外の業務が発生する可能性もあるため、「その他、甲乙間で別途合意した業務」を記載するなら、双方にとって有利な契約書となります。

【記載例】
第〇条(委託業務)
甲が乙に対し委託する業務(以下「本業務」という)内容は、次の通りとする。ただし、委託業務の履行に必要な関連業務および付随業務もすべて含まれる。
(1)(業務内容を詳しく記載する)
(2)関連業務および付属業務もすべて含まれる

③業務の遂行方法と契約期間

業務の発注者であれば、受注者に対して少しでも早く成果を出してほしいと思うものです。ですから、どのような方法で業務を遂行するのか、いつまでに業務を完了してもらいたいかなど、具体的な方法と契約期間を双方で決めることは大切です。

双方で話合いのもと決定するなら、受注者もスケジュールを調整しやすく、業務を効率よく遂行することができるでしょう。また、発注者も業務状況を把握することができ内容にしておくなら、業務の方向性を指示することが可能となり、より正確な業務遂行へとつながるでしょう。

【記載例】
第〇条(委託期間)
本業務の委託期間は、令和○○年○○月○○日より令和○○年○○月○○日とする。

④支払方法と支払時期

業務を委託する場合は、業務委託料や支払いのタイミングなどについても明確にしておくべきです。委託料の支払い関するトラブルは、多々発生しています。受注者は、どのような条件に達成したときに、いつまでに支払うのか、を具体的に記載しておくようにしましょう。

また、大規模な業務を委託する場合は、着手金の有無、一括払いもしくは分割払いか、などについても決めておくことをおすすめします。

【記載例】
第〇条(委託料とその支払い)
(1)甲が乙に対して支払う委託料は、○○○○円(税別)とする。
(2)甲による支払いは、○○締め○○までに、乙の指定する銀行口座に現金振り込みを実施する。振込手数料に関しては、甲が負担する。

⑤納品の期限

納品の前後は、トラブルが発生しやすいため、納品の期限や検収期間、条件などに関して契約を交わしておくことは大切です。特に受託者は、無理のない納期契約を結ぶようにしましょう。その際、万が一、納期が遅れた場合に備えて、その旨に関する一文を付け加えることができるでしょう。

【記載例】
第〇条(納品)
受託者は、仕様書に基づいて成果物を作成し、納期日である令和○○年○○月○○日までに納入する。その際、成果物とともに納品書も作成する。万が一、納期が遅れるおそれがある場合は、委託者に対してその旨と遅延理由を直ちに通知し、新たな納入予定日について指示を受ける。

⑥納品の検収期間

成果物を納入した後、チェックをしてもらえずに報酬を請求できないというケースも生じえます。このようなトラブルを回避するために、検収の期限もあらかじめ設定しておくことは大切です。

【記載例】
第〇条(検収)
委託者は、受託者から成果物が納入された場合、同日から〇ヶ月以内を検収期間とし、その間に検収をしなければならない。

また、検収期間において、成果物に不具合が確認されたときの対応方法についても決めておく必要があります。具体的な再度納入日を決めないと、報酬が支払れないなどのトラブルにつながります。受託者側は、2週間から1ヵ月程度を目安とした再度納期ができるよう交渉してみることができるでしょう。

【記載例】
第〇条(検収での不具合)
検収において成果物に不具合が確認された場合、受託者は、再度、成果物を納入しなければならない。再度納入に関しての納期期限は、双方の協議のうえ決定する。

さらに、検収期間が終わっても受託者から何の連絡がない場合に備えて、自動的に報酬が請求できるよう契約を交わしておくことも大切です。納品しても報酬が支払われなかった、というトラブルの回避につながるでしょう。

【記載例】
第〇条(引渡)
委託者から検収確認の完了が通知された場合はその日、もしくは検収確認の通知がない場合は、検収期間満了日をもって成果物が引渡されたものとなる。

⑦瑕疵(かし)担保期間

瑕疵担保期間とは、検収後に、成果物に欠陥やミスが確認されたときの対応についての契約です。受託者にとっては、瑕疵担保期間が短ければ短いほど利点になります。通常、瑕疵担保期間は1ヵ月ほどの期間が設定されているようです。

【記載例】
第〇条(瑕疵担保)
検収後の成果物に欠陥やミスが見つかった場合は、受託者が無償で補修を行うものとする。但し、受託者の無償補修は、検収完了日より〇ヶ月以内とする。

⑧損害賠償

万が一、損害に関するトラブルが発生したときに備え、損害賠償に関する項目も記載しておくことができます。受注者は、損害賠償の金額が少しでも小さくなるよう交渉することがポイントです。そのためには、責任の範囲、期間、金額の制限などについて決めておくなら、無制限の損害賠償を請求されることはないでしょう。

【記載例】
第〇条(損害賠償)
本契約の当事者が、本契約に違反して相手方に損害を及ぼした場合、当該当事者は損害賠償を負うことになる。

➈所轄裁判所

万が一トラブルが発生したときに備えて、裁判を行う裁判所を記載しておきます。裁判中は何度も裁判所に出向くことになる可能性があります。クライアントの所在地が遠い場合、もし遠い場所の裁判所を指定されてしまうと、移動時間や費用などが膨大にかかります。

クライアントも同じ地域であれば所轄裁判所に関しても項目を設ける必要はありませんが、クライアントが遠い地域であるなら、万が一に備えて、所轄裁判所を決めておきましょう。

【記載例】(管轄裁判所)
本契約に関する訴訟は、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所として指定する。

⑩知的財産権

システム開発や生地の執筆などの業務委託の場合、知的財産権をクライアントに譲渡することが一般的となっています。

【記載例】(知的財産権)
本件の過程で生じた知的財産権、もしくは成果物に含まれる知的財産権に関しては、成果物の納入と同時に委託者に移転する。なお、知的財産権には、著作権、特許権、実用新案権、商標権、これらの権利を取得しもしくは登録を出願する権利、技術情報などが含まれる。

しかし、受託者の中には、独自のスキルや知識などを譲渡したくない場合もあります。ですから、知的財産権に関しても、契約内容に含めておくことは大切です。なお、知的財産権は、譲渡する前提で契約することが一般的となっていますので、著作権などに関して、次のような事項を付け加えることができるかもしれません。

【記載例】
第〇条(知的財産権)
受託者が本件業務の着手前から有している知的財産権は、受託者に留保されるものである。

⑪契約内容の変更や解除などの条件

契約内容の変更や解除に関する項目も設けることは大切です。どのようなケースが契約解除になるのか、具体的に記載しておきましょう。また、契約終了後に受託者がすべきことがあれば、その旨も一緒に記載しておくことができるでしょう。

【記載例】
第〇条(契約解除)
当事者の一方が本契約の条項に違反したときは、直ちに本契約が解除され、被った損害の賠償を請求することができる。

⑫機密保持

業務で知った情報は、業務遂行以外には使用しないことや、第三者に漏洩しないことなどを交わすことも大切です。

【記載例】
第〇条(秘密保持)
乙は本契約に関して知りえた情報を、一切ほかに漏洩してはいけない。

業務委託契約書の作成で注意すべきこと

業務委託契約書を作成する際、知っておくべきことをいくつかみていきましょう。

業務委託契約書の作成は委託者側で作成するとよい

業務委託契約書の作成は、受託者もしくは委託者のどちらが作成しても特に問題ありません。しかし、受託者側に作成を依頼すると、委託者が委託したいものが伝わらないことがあります。したがって、通常、業務委託契約書の作成は、委託者側で作成することが一般的となっています。

また、作成した後は、相手に確認してもらうことは必須です。もし確認者から訂正を求められたときは、双方でしっかり話合い、同意の上で修正を行うようにしましょう。

収入印紙を貼る

業務委託契約書は、必ず2通作成するのが基本です。なぜなら、契約書の偽造や加筆をされないようにするためです。また、委託の内容によっては、印紙税法の第2条に基づき、委託の金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

受託者が負うべき「善管注意義務」

善管注意義務とは、業務委託取引上において要求されている注意事項を守り、業務に従事する義務のことです。業務委託契約の中でも法律行為や真実行為を委任する場合は、依頼を受けた受託者は、善管注意義務を負うことになります。

テンプレートや雛形で確認してみる

業務委託契約書に記載することができる内容について上記でみてきましたが、記載すべき内容は法律で定められていません。ですから、自由に作成することが可能です。そのため、どのような項目を記載すればよいのか分からない、という方もいることでしょう。

そのような場合は、一般的な業務委託契約書のテンプレートや雛形などを参考にながら、作成することができるかもしれません。

一方的に不利な条件となっていないか確認する

特に業務委託の経験がまだあまりない方は、契約内容が一方的に不利な条件になっていないかどうかを確認することはとても重要です。報酬を支払う委託者と、報酬を受け取る受託者という関係の場合、委託者が受託者に対してさまざまな課題を押し付けるというケースも珍しくありません。

業務委託契約上の受託者と委託者は、本来であれば同等の立場の関係にあります。しかし、現実は委託者の法が有利になる傾向にあるため、受託者は不利な条件でないかどうかをしっかり確認するようにしましょう。

トラブル発生時の対応方法を確認する

業務委託契約を結んだ後、トラブルが発生するというケースはよくあります。そのため、契約書にトラブルが発生したときの対応が記載されているかどうかを確認しましょう。責任を負う期間、損害賠償、裁判などに具体的な内容と記載しておくなら、万が一トラブルが発生したとしても、問題をスムーズに解決することができるでしょう。

業務委託契約書と業務請負契約書

業務委託契約書と業務請負契約書は名前がよく似ていますが、受託者に求めることが異なります。業務請負契約書には「請負」と「委託」の2つの形態が存在しており、その多くはどちらの形態の契約なのかがはっきり記載されていません。

したがって、契約の内容を確認して判断することが一般的となっています。では、請負契約と委任契約にはどのような違いがあるのでしょうか?

業務請負契約とは?

民法第632条には、請負契約とは「業務を受注した者が、委託された業務の完成を約束し・・、業務を発注した者はその成果に対して報酬を支払う契約」であると規定されています。つまり、請負契約とは、一定の成果をあげることを目的としています。

たいてい納品すべき完成物が決まっており、受託者が予定期日通りに完成させた時点で、報酬の支払が発生します。納品すべき完成物に関しては、あらかじめ定義が決まっているため、もしその基準を満たしていない場合は、完成物として認められず、修正や再度納品をすることが求められるだけでなく、損害賠償を請求されることもあります。

業務委任契約とは?

民法第643条には、委任契約とは「受注した業務に関して、行為の遂行を目指した契約」であると規定されています。つまり、委任契約とは、契約した期間、場所など指定された業務をすること自体が報酬発生の対象になります。請負契約のように一定の成果は求められていませんが、業務の過程においては責任を問われることになります。

業務委託契約書の具体例

業務委託契約書は、どのようなときに契約が結ばれているのでしょうか?具体的な例をいくつかご紹介しましょう。

・清掃業務委託契約書
清掃業務委託契約書とは、清掃業務を外注するときに結ばれる契約書です。

・保守義務委託契約書
保守義務委託契約書とは、システムや機械の保守を委託するときに結ばれる契約書です。

・営業代行業務委託契約書
営業委託代行業務委託契約書とは、自社の商品やサービスの営業活動を他社に委託するときに結ばれる契約書です。

・コンサルティング業務委託契約書
コンサルティング業務委託契約書とは、事業に関する相談やアドバイスを委託するときに結ばれる契約書です。

・店舗運営業務委託契約書
店舗業務委託契約書とは、自社店舗の運営を他社に委託するときに結ばれる契約書です。

・デザイン業務委託契約書
デザイン業務委託契約書とは、デザイン業務をデザイナーなどに委託するときに結ばれる契約書です。

・研修業務委託契約書
研修業務委託契約書とは、自社の従業員の研修を他社に委託するときに結ばれる契約書です。

ここでは一部の業務委託契約書をご紹介しましたが、業務委託契約書の内容は多岐にわたります。したがって、契約内容もそれぞれの業種や業務内容にあったものにする必要があります。

まとめ

業務委託契約書は、委託者と受託者の委託契約が締結した証明になることに加え、双方の認識相違を確認する目的もあります。ですから、双方でしっかり話し合い、同意した上で作成するようにしましょう。

そして、業務委託契約書の作成後は、双方が内容をしっかり確認し、確認者から訂正を求められたら、再度話し合いをし、納得した内容となるものを作成するようにしましょう。


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