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【オンラインも可】次の年末調整までに準備しておきたいこと

2020年8月14日
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年末調整
「年末調整」は、その名のとおり「年末に行うもの」というイメージが広く持たれています。実際、実務は11月頃から始まりまるので、そのイメージが誤っているわけではありません。

しかし、年末調整の準備は、年末を待つことなく、早めにしておくことをお薦めします

多忙を極める年末には、年末調整に必要な書類の洩れ・欠けが発生しがちです。また、近年はマイナンバーを用いたオンライン化も積極的に進められているので、活用できるように必要な手続等、予め進めておくとよいでしょう。

とはいえ、

「よりスムーズにする方法なんて、あるのだろうか?」
「11月から12月は、年末調整にかかりきりになってしまう」

といった会社や担当者の方も少なくありません。年末調整は長年行われていることだからこそ、社内の慣習に則って引き継ぎがなされ、その意味や効率的な実務が現担当者の方に伝わっていない場合もあります。

そこで、今回は年末調整の基礎知識やその流れ等について詳しく解説していきます。年末調整の時期であるか否かに関わらず、年末調整をよりスムーズにし、負担やミスを少なくするためにできることを予めチェックしておきましょう

【何をする?】年末調整とは

年末調整とは、給与所得者の所得税納付にあたっての過不足を調整する制度です。所得税(税金)は毎月の給与や賞与から「源泉徴収」、つまり天引きされています。これは給与の支払いを受けているすべての人が対象となっています。

年末調整では、源泉徴収された所得税が必要以上に多すぎた際に、払い過ぎた分が戻ってきます(少なすぎた場合には、さらに納税する必要が生じます。これを「追徴(ついちょう)といいます)。

参考記事:年末調整の還付金はいつ、どのようにもらえる?

個人で税金の精算をする必要はなく、給料を支払う事業者側がすべて行います。企業としては、遅滞なく必要書類の配布・回収を従業員に行う必要があります。

【誰に?】年末調整の対象者とは

年末調整の対象者は、給料の支払いを受けている人すべてが該当します。これには正規雇用者はもちろんのこと、パートタイマーやアルバイトの方等も含まれます。

しかし、給与所得者であっても、次のようなケースに該当する人は対象外となります。

・1年間の給与収入が2,000万円以上ある人
・災害被害を受け、災害減免法に従って所得税の徴収猶予や還付をすでに受けとっている人
・1年の途中で退職し、再就職をしていない人
・副業やアルバイト等2か所以上から収入源のある人(個人で確定申告をする必要がある)
・2か月以上連続して雇用されていない人(日雇い労働者等)

例えば、近年は地震や台風といった天災が少なくありません。また、不況や働き方の多様化により副業を行っている人も増えています。こうした項目に従業員が該当しているか否かを確認し、適切に対応することが必要です。

一方、次のようなケースに該当する場合は、会社側で年末調整が行う必要があります。

・海外勤務や転勤等により、非居住者になった人
・在籍期間中に死亡し、退職した人
・著しい体調不良で退職し、再就職する見込みのない人
・12月の給料を受け取った後に退職した人
・パートタイマーやアルバイト等で給与額が103万円未満だった人

なお、派遣社員の年末調整は派遣元の企業が実施します。派遣先の企業としては、派遣社員が年末調整を受けられるように源泉徴収票を遅滞なく準備することが必要です。

派遣社員の中には、勤務先が複数あったり、雇用契約のタイミングにより年末調整ではなく確定申告の必要がある人もいます。基本的に、派遣社員に関する各種手続きは派遣元の企業が行いますが、派遣先の企業としても普段から仕組みを理解しておくと、派遣社員の方の不安解消の一助になるでしょう。

【いつから始める?】年末調整の流れとは

年末調整は取り扱う書類が多いため、従業員から必要書類をスピーディーに集めることが大切です。従業員側にも準備の期間が必要なことを考えると、11月の早い段階から従業員に通知し、11月中には書類が全部揃っているという状態が理想的といえるでしょう。

また、申告書に記載された金額が正確でないと、年末調整の実務にも大きく影響を与えます。従業員一人ひとりが、正しく記入する必要があるということを周知することも大切です。なお、年の途中で転職した人は、前職の源泉徴収票を準備しておく必要があるので、該当者にはアナウンスをしておくとよいでしょう。

(事業所)
給与を支払う雇用主側は、年末調整を次のようなスケジュールで行います。

11月:給与総額と徴収額の計算
年末調整が対象となる従業員の給与総額を確定します。未払いの状態でも支払いが確定している給料は、その年の年末調整の対象となるので、年内に支払う給料を確定し給与総額を計算します。

また、年の途中で入社した従業員がいる場合、その年に前職で給与が支払われていたなら、前職での源泉徴収票が必要となります。退職時に源泉徴収票を渡す会社が多いと思われますが、なかには発行を失念している場合もあるでしょう。従業員に確認し、受け取っていなければ前の勤務先への発行を求めるように伝えます。

なお、源泉徴収票を紛失した場合、再発行は可能です。その従業員が源泉徴収票を紛失してしまっている場合、その旨を伝えましょう。前の勤務先が発行を拒否した場合、国税庁での手続も可能です。

参考:国税庁ホームページ 源泉徴収票不交付の届出手続 

12月:年末調整の計算と書類の保管
年間で支払う給与と賞与の金額が確定し、従業員から各種必要書類を集めることが完了すれば、その年の所得税を計算することが可能になります。

まず、1月から12月までに支払った給与から天引きされた所得税の合計額と、年末調整で計算した所得税を比較します。年税額が少なければ毎月払い過ぎていた諸特性が12月に支払う給料に還付し、年税額が多ければ所得税を追加で徴収し、年末調整は完了となります。

年末調整が終わったら、各従業員に源泉徴収票を渡します。年末調整で使用した扶養控除申告書や各種控除証明書等の書類は税務署へ提出する必要はありませんが、事業主が保管しておくことが求められています。

1月:源泉所得税の納付と自治体への住民税の提出
年末調整で確定した所得税は集計し、翌年の1月10日までに管轄地区の税務署に納付します。ただし、源泉所得税の納期特例を申請している場合は、半年分の源泉所得税を翌年の1月20日までに納付します。

年間の給与所得が確定したら、各従業員が翌年1月1日に住んでいる自治体に「給与支払報告書」と呼ばれる書類を提出します。各自治体への提出期限は、翌年1月末日となっています。

(従業員)
年末調整の対象となる従業員は、11月末までに必要な書類を提出する必要があります。書類の準備には時間を要する場合もあります。予め何が必要かを把握し、手配を進めておくことが大切です。

年末調整の期限をオーバーすることのないよう、それぞれが「いつ、何をしなくてはいけないのか」を把握し、スムーズな年末調整を目指しましょう。

参考記事:年末調整期限・時期はいつまで?間に合わないとどうなるの?

【何が必要?】年末調整に必要な書類とは

年末調整に必要な書類には、次のようなものが挙げられます。

・すべての人が必ず提出が必要な書類
「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」
この書類は、年末調整で、人に関する控除を受けるために提出する書類で、すべての人が提出するように求められています。

書類を提出することで、配偶者等の扶養控除・障害者控除(特別障害者を含む)・寡婦(夫)控除・勤労学生控除等の諸控除を受けられます。

参考記事:【年末調整】扶養控除等申告書の書き方と注意すべきポイント!

注意したい点としては、この申告書には「マイナンバー(個人番号)」の記載が原則必要となっているということです。給与所得者本人・控除対象者である配偶者や扶養親族等のマイナンバーも記載しなければなりません。

なお、「マイナンバーカードを発行していないから、自分のマイナンバーがわからない」という従業員がいるかもしれません。

しかし、マイナンバーカードの発行はしていなくても、マイナンバーを個々人に伝えるために発行された通知カードがあればマイナンバーを把握することはできます。また、マイナンバーが記載された住民票の写しを発行することも可能です。こうしたことを伝え、スムーズに記入が進められるようにしましょう。

ここ数年、国はマイナンバーカードの普及を進めており、年末調整や確定申告をマイナポータル(個人番号を用いた政府が運営するオンライン行政サービス)を用いることにより簡便化されることとなりました。

オンライン化によって、控除証明書等のデータ受取りや控除申告書の自動入力が可能となり、記入の負担やミスが減ることが期待されます。ただし、このサービスを利用するには、マイナンバーカードの発行や、マイナポータルへの登録等が必要です。

最近でも、給付金申請や、マイナポイントの獲得、健康保険証との連携等に用いたい人が増えており、マイナンバーカードの発行業務が立て込んでいるとの報道が多くなされています。年末調整に用いる場合、実務を始めるよりも前から準備を進めておくことをお薦めします。

参考:国税庁ホームページ マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化

また、世帯主を記入する欄がありますが、その時点での正しい世帯主を記述しなくてはなりません。結婚した場合や、実家に何か変化があった等で世帯主の変更が生じたときには「世帯主変更届」が必要であること等を、年末調整の準備が始まるより前に、社内にアナウンスしておくとスムーズでしょう。

参考記事:【世帯主の定義】年末調整の世帯主は誰のこと?世帯主と続柄の関係とは?

・該当者によって提出が必要な書類
「給与所得者の配偶者特別控除申告書」
この書類は、年末調整により配偶者関係の控除を受けることができる書類です。給与所得者がこの書類を提出すると、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられます。

配偶者控除には、「民法の規定による配偶者であること」をはじめとした複数の要件が課されており、配偶者の年収によって控除額が変わってきます。税制改正で要件が変更されることもあるので、最新の情報で確認し、申告書記入にあたっては正確な額を把握する必要があります。

参考:国税庁ホームページ 配偶者控除
参考記事:【最新版】年末調整の配偶者控除と配偶者特別控除の書き方

「給与所得者の保険料控除申告書」
この書類は、年末調整で、保険関係の控除を受けるために提出する書類です。給与所得者がこの書類を提出すると、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除等を受けることができます。

なお、こうした控除を受ける場合には保険会社が発行する証明書が必要です。加入者には保険会社から証明書が郵送されることが一般的です。また、証明書を紛失してしまった場合でもオンラインで発行可能な会社も増えています。

こうしたことを従業員に予め伝えておくと、提出期限ギリギリになって「証明書を紛失してしまった」「控除をしたいが証明書がないから記入が進まない」といったトラブル予防につながるでしょう。

「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」
この書類は、年末調整で住宅借入金等特別控除、つまり住宅ローン控除を受けるために必要な書類です。住宅ローンを組んだ年に確定申告をした人を対象に税務署から交付されます。金融機関から住宅ローンの残高証明書を添付してもらい、提出する必要があります。

なお、2年目以降は取扱いが異なりますので、実務上の注意が必要です。

参考記事:「年末調整」2年目以降の住宅ローン控除で必要な書類と手続き方法

まとめ ~次の年末調整は、よりスムーズに!~

年末調整は、人に給料を支払っている事業所が行うことが義務付けられています。年末調整は法改正の影響を受けやすく、その度に申告書の様式等も変更されます。

しかし、「法改正したから年末調整に手間取ってしまった」とか「書類が間に合わなくて手続きできなかった」というわけにもいきません。

年末調整は経営者自身や担当者が個人で計算することもできますが、近年は給与計算をスムーズに行えるソフトも充実しています。また、税理士等の専門家に依頼することも、複雑な年末調整を効率よく行う方法の1つと言えるでしょう。

年末調整の時期を期末にしている会社も多く、ただでさえ忙しい時期に社内で負担を抱えるよりは、プロにある程度まかせることでスムーズかつ適切な対応を取ることができるなら、と考える会社も増えてきています。

しかし、秋頃に慌てて「今年の年末調整をお願いします!」と依頼するのもトラブルのもとです。事務所によっては、引き受けてもらえないかもしれません。

年末調整の基本を改めて見直しつつ、自社の負担を見定めてみるのも一考です。


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