振替伝票とは?伝票制の仕組みと書き方・記入例まで分かりやすく解説! | 税理士コンシェルジュ

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振替伝票とは?伝票制の仕組みと書き方・記入例まで分かりやすく解説!

2020年9月7日
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事業主は日々、大小を問わず、すべての取引を記帳に記録する必要があります。一般的に「仕訳帳」と呼ばれるこの帳簿は、取引を日付順に記載し、その後、「総勘定元帳」へ転記します。しかし、日付の順番が前後してしまうことがあり、調整や修正が必要なときがでてきます。

そのような問題を解消させる手段として、「振替伝票」を起こします。この記事では、振替伝票の役割や仕組み、書き方。記入例など振替伝票について紹介していきます。

振替伝票とは?

事業を営上で、さまざまな取引が行われます。事業主は、会社のお金の動き、つまり経済状況を把握するために、すべての取引を「仕訳帳」に記録する必要があります。

仕訳帳には、原則的に日付順に記載する、というルールがあるため、すべての取引が日付順にひとつにまとまっています。したがって、それぞれの取引に関して修正や調整をすることはできません。

そこで、それらの諸問題を解消するために、伝票を作成し、総勘定元帳へ転記するという手段をとる「伝票制」を採用している事業所が少なくありません。その際に使用される伝票は、取引ごとにいくつかの種類がありますが、そのうちのひとつが「振替伝票」です。

振替伝票を起こすタイミング

振替伝票は、現金の入金や出金以外の取引、つまり、現金以外の取引のときに使用される伝票です。つまり、現金のやりとりの際には「入金伝票」と「出金伝票」を利用しますが、それ以外の取引に関しては「振替伝票」を作成します。

近年の取引では、事業の仕入れや売上の時に現金が使われることは減少傾向にあります。その代わりとして、銀行口座や小切手、手形などを使用して取引が行われることが多くなっているため、振替伝票を作成する機会は増えています。

入金伝票では借方には現金、出金伝票では貸方に現金の勘定科目を使用することが基本となっていますが、振替伝票では現金以外の勘定科目を使用することができます。つまり、勘定科目が限定されていないので、任意で勘定科目を設定できるという特徴があります。

伝票制とは?

「伝票制」とは、伝票から総勘定元帳に転記する仕組みのことです。前述したように、仕訳帳と使った記帳作業は、1つの仕訳帳に日付順に取引内容を記載する必要があるため、効率的ではありません。

そこで、個々で取引内容を記載できる「伝票」を起こし、仕訳帳の代わりとして使い、その後、まとめて総勘定元帳へ転記する、という一連の流れが「伝票制」といいます。

仕訳帳の場合は、発生順で取引内容を記入するという性質があるため、経理担当者が作成することが一般的です。それでも管理するのが難しいと言われています。しかし、伝票制であれば、経理担当者以外も伝票に取引の記録を残すことができる、というメリットがあります。

3種類の伝票制とその仕組み

事業所によって、日々の取引や現金の取扱い状況などは異なります。事業所の規模や業種・業界も関係してくることでしょう。そのため、伝票制には、使う種類の伝票の数から3つの種類に分類されています。

それは「1伝票制」「3伝票制」「5伝票制」の3種類です。それぞれどのような特徴があるのかを把握し、自社の状況に合ったものを採用することができるでしょう。

【伝票の種類】
伝票には、入金伝票、出金伝票、売上伝票、仕入伝票、振替伝票の5種類があり、次のようなときに使用します。

・入金伝票:現金が入ってきたときに作成する伝票
・出金伝票:現金が出ていったときに作成する伝票
・売上伝票:商品やサービスなどの売上が発生したときに作成する伝票
・仕入伝票:商品の仕入れをしたときに作成する伝票
・振替伝票:現金以外の取引があったときに作成する伝票

この5つの種類の伝票から、使用する伝票の数に応じて、「1伝票制」「3伝票制」「5伝票制」のどれかを採用し経理処理します。

1伝票制

1伝票制とは、仕訳伝票にすべての仕訳を記入し、「仕訳伝票」から総勘定元帳に転記するという方法です。仕訳伝票の形式や記入内容は仕訳帳と全く同じなので、仕訳帳がバラバラにされたものが仕訳伝票と言えるでしょう。1伝票制では、現金での取引も含めたすべての取引に振替伝票を作成するので、「仕訳伝票」とも呼ばれています。

3伝票制

3伝票制とは、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」の3種類の伝票を作成し、総勘定元帳に転記するという方法です。1伝票制では仕訳伝票のみの使用でしたが、現金を扱う取引に関しては入金伝票と出金伝票、現金以外の取引に関しては振替伝票を利用します。現金取引と現金以外の取引を容易に区別できるため、現金取引が多い業種の多くは、3伝票制を採用しています。

5伝票制

5伝票制とは、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」「仕入伝票」「売上伝票」の5つの伝票作成し、総勘定元帳に転記するという方法です。現金取引に加えて、商品の仕入れ(買掛金)と売上(売掛金)を示す仕入伝票と売上伝票も利用します。仕入れが多い小売業や掛け取引が多い卸売業などは、5伝票制を採用すると便利です。

振替伝票に記載すべき項目とは?

振替伝票では、取引内容を2つに分けて記載する必要があります。つまり、借方と貸方の双方に勘定科目を記載します。記載すべき項目には、次のようなものが挙げられます。

・日付
取引をした日付を記載します。

・勘定科目
取引に該当する勘定科目を、借方と貸方の双方に記載します。

・金額
取引内容に合った金額を、借方と貸方の双方に記載します。

・摘要
取引内容の注釈などを記載します。

・起票者
起票者のサイン、もしくは押印をします。

振替伝票の具体的な記入例

では、振替伝票にどのようなことを記載すればよいのか、具体的な例をみていきましょう。

【普通預金口座からお金を引き出した場合】
・例
2020年9月1日に普通預金口座から3万円を引き出した。

・振替伝票記入例
日付:2020年9月1日
(借方)現金 30,000円  (貸方)普通預金 30,000円 (摘要)現金引き出し

【銀行間でお金を移動させた場合】
・例
2020年9月5日に、〇〇銀行から△△銀行へ、30,000円振替をした。

・振替伝票記入例
日付:2020年9月5日
(借方)普通預金 30,000円 (貸方)普通預金 30,000円 (摘要)〇〇銀行から△△銀行へ口座振替

【請求書を発行した場合】
・例
2020年9月10日に、取引先A社に10万円、B社に5万円の8月分の請求書をそれぞれ発行した。

・振替伝票記入例
日付:日付:2020年9月10日
(借方)売掛金 800,000円 (貸方)売上高 80,000円 (摘要)A社に8月分請求書を発行
(借方)売掛金 50,000円  (貸方)売上高 50,000円 (摘要)B社に8月分請求書を発行

同日の同じ仕訳の取引の場合は、1枚の振替伝票にまとめることができます。合計欄にA社の80,000円とB社の50,000円を合計した130,000円を借方と貸方の合計欄に記載します。

【売上が振り込まれた場合】
・例
2020年9月20日に、取引先B社から売掛金5万円が手数料216円込で振り込まれた。

・振替伝票記入例
日付:2020年9月20日
(借方)普通預金 50,000円 支払手数料 216円 (貸方)売掛金 50,000円 振込手数料 216円 (摘要)B社の売掛金回収

【売上が手数料を差し引いて振り込まれた場合】
・例
2020年9月20日に、取引先A社から売掛金8万円が振り込まれたが、手数料216円は含まれていなかった。

・振替伝票記入例
日付:2020年9月20日
(借方)普通預金 79,784円 支払手数料 216円 (貸方)売掛金 80,000円 (摘要)A会社の売掛金回収

振込手数料が含まれていなかった場合、現金通帳には振り込んだ相手先の氏名と、手数料を差引いたあとの金額が履歴として残ります。そのため、売掛金と振り込まれた金額の差額が手数料となります。

振替伝票の作成方法

振替伝票は手書きで作成することもできますが、Excel入力や会計ソフトを利用して作成することも可能です。

【手書きの作成】
振替伝票を作成する方法のひとつは、従来ながらの手書きによる方法です。手書きによる作成は、パソコンを利用しない方でも伝票を作成できるというメリットがあります。ただし、取引の数にもよりますが、紙の伝票が溜まっていくことで、集計作業が複雑になりやすい傾向にあります。

【Excelで入力して作成】
振替伝票はExcelで作成することも可能です。手書きで作成するのと同じように、前述した必要事項を入力します。パソコンでデータを作成することで、管理しやすいというメリットがあります。ただし、データが突然消えたりしないよう、バックアップをしておくなどデータの取扱いには注意が必要です。

【会計ソフトを利用して作成】
近年は、会計ソフトを利用して振替伝票を作成する方が増えています。会計ソフトのメリットは、データを直接入力できるので、作業がスムーズ進むことが挙げられます。

また、仕訳や伝票の集計も自動で行ってくれるので、人的ミスが生じません。ただし、会計ソフトを購入し、使い方を覚える必要があるので、覚えて慣れるまでには時間がかかることでしょう。

振替伝票を作成する際の注意点!

振替伝票をはじめとした伝票の作成には、処理のミスが発生しやすい傾向にあります。したがって、伝票を作成するときには、慎重に行う必要があります。

借方と貸方の合計金額は必ず一致!

振替伝票の借方と貸方の合計金額は、必ず一致している必要があります。もし合計金額が一致していないのであれば、総勘定元帳へ転記する際、ミス修正で多くの時間や手間をとられてしまいます。経理業務をスムーズに行うためには、毎回の取引ごとに作成する伝票の借方と貸方の合計金額を一致させることにかかっている、と言えるでしょう。

振替伝票の保存義務

振替伝票などの経理関係に係る書類は、法律上、一定の期間保存しておくことが定められています。

【法人税法は7年間の保存義務】
法人税法で規定されている書類に関しては、「7年間」の保存義務があります。振替伝票は法人税法に関連する書類に該当します。振替伝票のほかにも、請求書、納品書、領収書、契約書、貸借対照表、損益計算書なども該当します。

【会社法は10年間の保存義務】
会社法で規定されている書類に関しては、「10年間」の保存義務があります。これには売上帳、仕入帳、総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳などが該当します。

ですから、法人税法と会社法の双方で対象となっている書類に関しては、10年間の保存義務があります。ただし、近年は、国税関係の帳簿に関しては、電子化での保存が認められています。

そのためには、事前に届出を提出する必要がありますが、書類のペーパーレス化につながるため、書類の保管スペースを確保する負担がなくなり、経理業務を効率化を期待できます。

まとめ

業務で発生したすべての取引は、日付順に仕訳帳へ記載し、総勘定元帳へ転記する必要があります。しかし、この作業には、日付順に記載する、という原則があるため、さまざまな問題が生じます。

それを解消するのが「振替伝票」を利用した「伝票制」を採用です。伝票制を採用するなら、経理業務は軽減され、効率化よく作業が進みます。そのために振替伝票の正しい作成をマスターしていきましょう。


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