2020年6月30日

社会保険料の計算方法とは?その種類や給与計算時の注意点を徹底解説

給与明細を見た時に「社会保険料って高い・・」と、誰もが一度は感じたことがあるでしょう。実は、社会保険はその仕組みから計算方法に至るまで非常に複雑で、給与計算担当者が最も間違えやすい計算のひとつとして知られています。そのため、知識不足ゆえに損をしていることもあり得ます。

そこで今回は、給与計算担当者はもちろん、給与所得者も知っておくべき、社会保険料の種類や計算方法などの基礎知識について徹底解説していきます。

社会保険とは?

社会保険は、加入者が老後まで安心して生活できるよう必要最低限のことを保障することを目的とした保険です。そして、社会保険料を納めることで、国の「社会保障制度」を適用させるための財源としています。そのため、国民は社会保険料を納める義務があります。

では、国の社会保障制度とは、どのようなものなのでしょうか?社会保障制度は、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「健康医療・公衆衛生」の4つの制度で構成された総称です。つまり、社会保険は、社会保障制度のひとつなのです。

社会保険にはいくつかの種類が存在していますが、病気やけがなど生活に困難をもたらす自己に遭遇した場合に、一定の給付が行われ、人々の生活の安定を図るために、事業形態や企業の規模によって、それぞれ加入することが義務付けられています。そんな社会保険には、「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」に大きく分類されています。

広義の社会保険

広い範囲を意味する社会保険には、病気、けが、出産、障害、老齢、死亡、失業などに対して必要な保険給付を行う公的な保険が該当します。これには、労働者すべてが加入する「被用者保険」と、個人事業主やフリーランスなどが加入する「一般国民保険」の2種類に区分されています。なお、被用者保険の場合は、さらに「狭義の社会保険」と「労働保険」に区分されます。

狭義の社会保険

狭義の社会保険とは、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つをまとめた総称のことです。「労働保険」とは、「雇用保険」と「労災保険」を合わせた総称です。

なお、就職や転職をした際には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、個人事業主の場合は国民健康保険、またすべての労働者は、労災保険と雇用保険の加入手続きをすることが義務付けられています。そのため、「社会保険」という場合は、「狭義の社会保険」を指します。

社会保険の種類と保険料

先述したように、社会保険には「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労働保険」の5種類存在しています。そして、その中の雇用保険と労働保険は、まとめて「労働保険」と総称で呼ばれています。

では、納めた社会保険料が、どのように給付するお金の財源になっているのか、社会保険料の種類別にみていきましょう。

健康保険料

健康保険料は、病気やけがなど治療をする際、医療費の一部を負担するための財源として使われている、公的な医療保険です。健康保険料を納める義務のある対象者は、正社員に加え、一定の条件を満たしているパートやアルバイトも該当します。一定の条件とは、以下のものです。

・2ヶ月以上雇用する見込みのある労働者
・週所定労働時間が、正社員の4分の3以上の労働者
・1ヶ月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上の労働者

なお、雇用労働者の人数が、501人以上の事業所の場合は、次の要件に該当する労働者も社会保険料加入の対象者となります。(学生は除く)

・1年以上雇用する見込みのある労働者
・1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者
・月収88,000円以上の労働者

株式会社などの法人の場合は、社長1人だとしても社会保険に加入しなければいけません。個人事業主の場合は、従業員を5人以上雇用しているなら社会保険の加入義務が発生します。ただし、個人事業主の場合は、自由業、農林水産業、宗教業など一部の業種に関しては、社会保険加入の対象外となるものがあります。

介護保険料

介護保険料は、自宅や介護施設で介護サービスを受ける際、費用の一部を負担するための財源として使われる保険料です。給与所得者であれば、40~64歳までの労働者が加入対象となります。加入条件は健康保険料と同じです。

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、老後もしくは障害・死亡の際に給付される、老齢・障害・遺族厚生年金の財源として使われる保険料です。70歳未満の労働者が加入対象者となります。加入条件は健康保険料と同じです。

雇用保険料

雇用保険料は、失業者や育児・介護休業を利用した労働者、60歳以上で勤務している一部の労働者に給付するための財源として使われる保険料です。個人事業主、法人役員、家族従業員、学生などは、原則として雇用保険は対象外となります。

労災保険料

労災保険料とは、労働者が業務中もしくは通勤途中に、事故などの災害に遭ったとき、企業が従業員に補償すべきお金を支払うための財源として使われる保険料です。労基法上の労働者に該当する場合は、労働時間や雇用形態を問わず、すべての労働者が加入対象者となります。

「算定基礎届」と「標準報酬月額」

社会保険料は、事業者側と労働者である被保険者が折半して負担をします。被保険者が負担する保険料は、毎月支払われる給与や手当などの報酬によって決まります。しかし、実際に支払われる報酬は、毎月変動します。毎月、報酬額が変動する度に社会保険料を計算することは、給与計算担当者にとって時間と手間がかかる大きな負担となります。

そこで、社会保険では、このような手間を省くために、社会保険料の計算用の枠を設定し、「標準報酬月額」を保険料を算定する基礎としています。標準報酬月額は、毎年4月~6月の給与額に基づいて決定し、それを記載した「算定基礎届」と呼ばれる届けを、保険者に提出することが義務付けられています。

標準報酬月額の概要

標準報酬月額とは、給与等の平均額が、金額ごとに区分された、「算定基礎書」と呼ばれる等級表に当てはめたものです。算定基礎書をもとに、各労働者ごとに、毎年4月から6月の賃金をベースに「等級」決定します。

各等級ごとに「標準報酬月額」が定められており、1年間は同じ標準報酬月額で保険料を算出していきます。つまり、4月~6月に他の月よりも残業を多くすると、その分標準報酬月額が上がってしまうため、1年間の保険料が上がってしまいます。

なお、標準報酬月額は、毎年9月に改訂が行われます。標準報酬月額となる前の賃金額には、「基本給」をはじめとした「残業手当」「家族手当」「住宅手当」「役職手当」「通勤手当」「年4回以上の賞与」「残業代」など労働の対価となる諸手当も含まれます。

一方、標準報酬月額となる前の賃金に含まれないものもあります。代表的なものとして「祝い金」「見舞金」「出張旅費」「年3回以下の賞与」「退職手当」などが該当します。

標準報酬月額の計算方法

報酬月額は、原則、4月・5月・6月に支払った賃金の合計総額を3で割った金額です。つまり、「(4月~6月の賃金)÷3=報酬月額」という計算式になります。しかし、例外もあります。そのひとつとして、「4月の報酬支払基礎日数が17日未満で、5月と6月の報酬支払基礎日数が17日以上の場合」は、5月と6月の平均報酬額が報酬月額となります。

また、「4月と5月の報酬支払基礎日数が17日未満で、6月の報酬支払基礎日数が17日以上の場合」は、6月の報酬額が報酬月額となります。

算定基礎届の対象者

一定の要件に該当する被保険者の場合、算定基礎届の提出対象外となることがあります。ここでは、算定基礎届の提出対象となる被保険者と、提出対象外となる被保険者の要件をみていきましょう。

【算定基礎届の提出対象となる被保険者の要件】
・7月1日時点で働いており、保険資格を5月31日以前に取得している人
・退職をしているが、保険資格を失った日付が7月2日以降の人
・育児休業や介護休業をなどを利用し、休職や欠勤した人
・刑務所に収容された人

【算定基礎届の提出対象外となる被保険者の要件】
・7月1日時点で働いていたが、保険資格を取得した日が、その前月となる6月1日以降に該当する人
・保険資格を失った日付が、7月1日以前の人
・7月に「月額変更届・育児休業等終了時変更届」を提出する予定の被保険者
・8月もしくは9月に「月額変更届・育児休業等終了時変更届」を提出する予定の被保険者

算定基礎届の提出期限

社会保険の算定基礎届は、その年の7月10日が提出期限となっています。算定基礎届に、提示決定対象者の報酬月額を記載し、日本年金機構や健康保険組合などの保険者に提出します。

社会保険料の計算方法①狭義の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)

社会保険料の中でも、「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」の3つは、収入の見込み額に基づいて、標準報酬月額を算出し、労働者と会社(給与支払者)の両方で負担します。給与計算担当者は、保険料額を計算する必要はありません。

なぜなら、日本年金機構などの保険者が納付額を計算し、通知されるからです。しかし、計算根拠となる手続きは、事業所側で行う必要があります。つまり、毎年「算定基礎届」を保険者に提出しなければいけません。

社会保険料の計算式

「標準報酬月額」が定まったなら、それを基に、その年の9月~翌年8月の保険料を計算します。社会保険料は、「標準報酬月額×保険料率÷2=各保険料」という計算式で求めます。この基本計算式をベースに、社会保険である「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」の計算方法を詳しくみていきましょう。

【健康保険料(社会保険料)の計算式】
健康保険料の場合、労働者本人負担額は、「標準報酬月額×健康保険料率÷2=健康保険料(本人負担分)」という計算式で求めることができます。

健康保険料の場合、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と「健康保険組合」の2つの運営団体があり、それぞれ規約が設けられています。協会けんぽの保険料率は、各都道府県ごとに定められた健康保険料の料額表に基づいて決定します。健康保険組合の保険料率は、組合ごとに健康保険の料額が設定されています。

【厚生年金保険料(社会保険料)の計算式】
厚生年金保険の保険料率は、厚生年金保険の保険料額表に基づき、全国一律に定められており、平成29年9月分以降18.3%と現在のところ固定(変動する可能性もあります)されています。つまり、「標準報酬月額×18.3%÷2=厚生年金保険料(本人負担分)」という計算式で求めることができます。

なお、厚生年金基金の加入している場合は、基金ごとに厚生年金保険料率や厚生年金基金の掛金が異なるので注意してください。

【介護保険料(社会保険料)の計算式】
介護保険は、上記でも少し触れましたが、40歳~64歳(40歳の誕生日の前日に属する月~65歳の誕生日の前日に属する月まで)までが加入対象者となります。これら「第2号被保険者」の場合は、健康保険や国民健康の保険料に上乗せして支払うことになります。

65歳以上の「第1号被保険者」の場合は、企業などに勤務している給与所得者であったとしても、お住いの市区町村に納める必要があります。

介護保険料は、「標準報酬月額×介護保険料率÷2=介護保険料(本人負担額)」という計算式で求めます。なお、協会けんぽの場合、保険料率は全国一律1.73%と設定されています。

社会保険料の計算方法②労働保険(雇用保険・労災保険)

労働保険料の場合、労働者と折半するのではなく、全額事業所側で負担します。つまり、労働者の給与から労働保険料を天引きする必要がありません。一方、雇用保険料は、給与額面に雇用保険料率を乗じて算出する必要があります。つまり、「給与額×雇用保険料率=雇用保険料」という計算式で求めます。

標準報酬月額の改定タイミング

先述したように、標準報酬月額は、毎年4月~6月の給与額を基づいて標準報酬月額が決定し、その年の9月から8月までの保険料が決めることを「定時決定」といいます。基本、定時決定で標準報酬月額が決まりますが、例外ケースもあります。標準報酬月額決定を改定する例外のタイミングとは、「資格取得時の決定」「随時決定」「育児休業等終了時改定」があります。

資格取得時の決定

新入社員の場合は、給与の実績がないため、入社1年目は、標準報酬月額を求めることができません。そのため、定時決定ではなく、「資格取得時の決定」に基づいて社会保険料を算出します。次のようなステップで求めます。

ステップ1:まず残業代などの変則的な労働の対価を見積もる

ステップ2:基本給(固定給)にステップ1で求めた対価をプラスし、1ヶ月分の給与として算出する

ステップ3:見積もり給与額を標準報酬月額に当てはめ、社会保険料を算出する

例えば、4月に入社した新入社員の場合は、算出した社会保険料を4ヶ月後の8月まで適用させます。そして、9月以降は、実際の給与に基づいた標準報酬月額を適用していきます。

随時改定

労働者の中には、9月以降、年度の途中で給与の額が大幅に変動するケースもあります。例えば、年度の途中で基本給や家族手当など固定賃金が変動したり、3ヶ月間連続して平均賃金がアップしたりなど、現在適用されている標準報酬月額の等級との間に、2等級以上の差が発生した場合は、標準報酬月額の改定が認められます。これを「随時改定」といいます。なお、随時改定をする際には、「被保険者報酬月額変更届」を提出する必要があります。

育児休業等終了時決定

育児休業等の終了後、それらを理由に報酬額が低下した場合、固定賃金に変動がなくても、現在の標準報酬月額と1等級以上の差が生じたときには、報酬月額の改定が認められます。これを「育児休業等終了時決定」といいます。

【マニュアル】社会保険の手続き方法

では、最後に社会保険の手続きの流れを押さえておきましょう。手順をマニュアル化しておくなら、新たに労働者を雇用したとき、慌てることなく素早く必要な手続きができるでしょう。

ステップ1:書類の準備
・「年金手帳」
年金番号を確認するために必要

・「雇用保険被保険者証」
被保険者証番号を確認するために必要

・「源泉徴収票」

もしこれらの書類を紛失している場合は、年金手帳の場合は年金事務所、雇用保険被保険者証の場合はハローワークで再交付手続きが必要です。「再発行申請書」を作成してもらいましょう。

ステップ2:書類の記載
健康保険と年金保険の手続きは、採用日から5日以内にする必要があります。担当者は、新入社員に次の書類を記載し、提出してもらわなければいけません。

・「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」

・「健康保険被扶養者(異動)届」
配偶者や子どもなど被扶養者がいる場合のみ必要

・「国民年金第豪被保険者証届」
配偶者が20歳以上~60歳未満で、年収が130万円未満の場合のみ必要

なお、雇用保険の届けは、人事担当者が「雇用保険被保険者資格取得届」を記載し、採用月の翌月10日までに提出します。

ステップ3:保険者へ提出
書類が揃ったら、健康保険と年金保険は管轄地区の年金事務所、雇用保険は管轄地区のハローワークへ提出します。直接持参、もしくは郵送で提出します。

健康保険証が届くまでの「健康保険被保険者証資格証明書」

書類を保険者へ提出後、健康保険証が事業所に届くまでには、およそ2週間ほどかかります。それまでに労働者本人や家族などが医療機関を受診した場合は、医療費を全額負担しなければいけません。

そこで、事前に健康保険証の代わりとなる「健康保険被保険者証資格証明書」を年金事務所で交付してもらえば、発行後20日以内であれば、保険証と同額の負担で、医療機関を受診することが可能となります。

なお、「健康保険被保険者証資格証明書」を発行するためには、「健康保険被保険者証資格証明書交付申請書」という書類で申請する必要があります。この書類を提出すれば、「証明書」を即日に交付してくれます。「証明書」は、保険証と引き換えで返還します。

雇用保険の証書類は本人へ手渡すこと

事業者が、「雇用保険被保険者資格届」をハローワークへ提出すると、「雇用保険被保険者証資格取得等確認通知書」と「雇用保険被保険者証」の2通の「確認通知書」が交付されます。被保険者証通知用は労働者へ手渡し、事業主通知用は事業所で大切に保管します。

まとめ

社会保険には、いくつかの種類があり、収入や年齢、保険料率によって異なります。特に保険料率については、法改正により頻繁に変動しています。ですから、給与計算担当者は、最新の法改正に通じることはもちろん、被保険者の最新の情報もしっかり把握し、正確な社会保険料を納めるようにしましょう。

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