「国民総背番号制」とは?施行の目的からメリット・デメリットまで | 税理士コンシェルジュ

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「国民総背番号制」とは?施行の目的からメリット・デメリットまで

2020年9月24日
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「国民総背番号制(こくみんそうせばんごうせい」とは、国民一人ひとりに番号をつけて、その番号で個人情報を管理する制度のことです。国民総背番号と聞いても、あまりピンとこないかもしれませんが、「マイナンバー制度」と聞くならすぐにイメージできることでしょう。

国民総背番号制は、つまりマイナンバー制度のことです。この記事では、国民総背番号制(マイナンバー制度)の施行目的からメリット・デメリットまで徹底網羅していきます。

国民総背番号制とは?

国民総背番号制、つまりマイナンバー制度は、2016年(平成28年)1月から施行されています。施行前の2015年(平成27年)10月からはマイナンバーの個人への通知が行われました。アメリカやイギリス、韓国などの世界各国では、日本よりも早い段階ですでに国民総背番号制が実施されています。

国民総背番号制(マイナンバー制度)の概要

国民総背番号制(マイナンバー制度)とは、住民票を持つすべての国民に、個人番号(マイナンバー)を与える制度のことです。個人番号(マイナンバー)は、主に「社会保障」「税金」「災害対策」に関連したものに使用されます。

個人番号(マイナンバー)があれば、今まで複数の機関に存在していた個人情報を即座に同一人物だと確認することができるため、効率的に個人情報を管理、また処理することが可能となっています。

住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)と何が違う?

国民総背番号制(マイナンバー制度)が導入される前、2002年から「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」が運用されていました。では、国民総背番号制(マイナンバー制度)と住基ネットでは、どのような違いがあるのでしょうか?

まず両者は、カードによって公的な身分証明書として使うことができるという共通点があります。しかし、住基ネットは国民のわずか5%ほどしか交付されていませんでした。一方、マイナンバーは本人の意志に関係なく、住民票のあるすべての国民に通知カードが郵送されています。

つまり、自治体も個人もマイナンバーの通知カードを拒否するという選択肢はありません。住基ネットは「地方自治体」が主体の制度でした。そのため、プライバシー保護措置の関係で接続を拒否する自治体もありました。

しかし、国民総背番号制(マイナンバー制度)は「国」の政策です。したがって、住基ネットと国民総背番号制(マイナンバー制度)は異なる制度であり、施行目的やメリット・デメリットも異なります。

国民総背番号制(マイナンバー制度)施行の目的とは?

国民総背番号制(マイナンバー制度)を施行するの目的は、主に3つです。それは「国民の利便性の向上」「行政の効率化」、そして「公平・公正な社会の実現」です。では、それぞれの施行目的を詳しくみていきましょう。

【①国民の利便性の向上】
国民総背番号制(マイナンバー制度)施行前は、年金などの社会保障や税関係の申請を行う際には、申請者本人が事前に必要書類を準備する必要がありました。しかし、国民総背番号制(マイナンバー制度)の導入により、現在

では、それらの申請を行う際、添付書類は不要で行政機関への申請が行えます。また、行政機関に登録されている自分の情報を確認することも容易になりました。このように行政手続きを簡素化することで、時間や手間などの負担が軽減し、利便性が向上しています。

【②行政の効率化】
国民総背番号制(マイナンバー制度)の導入は、国民の利便性だけでなく、行政機関や地方公共団体などの行政にとっても作業の負担が軽減されています。行政の連携がスムーズ行われることで、作業の効率化を得ています。

【③公平・公正な社会の実現】
国民総背番号制(マイナンバー制度)を施行することで、現在では、国民一人ひとりの所得などの受給状況を把握しやすくなっています。そのため、社会保障において不正受給を防止し、必要な人には確実に給付することが可能となり、公平で公正な社会の実現を可能としています。

国民総背番号制(マイナンバー制度)のメリットとは?

メリットその①手続きが簡単になった。

国民総背番号制(マイナンバー制度)が掲げた目的「国民の利便性の向上」の実現のおかげで、施行前と比較すると、行政手続きが簡便化され、容易に手続きが行えるようになりました。

ひとりの国民を複数の番号で管理すると、行政で手続きを行う際に、多くの時間と手間を必要とします。しかし、各機関が管理番号を共通化することで、各機関だけでなく、国民も行政手続きが簡単になります。

そのため、現在では、Aの機関に行って国民番号(マイナンバー)を提示すると、そこでの手続きに必要な情報を、暗号化された国民番号(マイナンバー)を使い、Bの情報を照会することができます。したがって、国民はAの機関の窓口ですべての行政手続きを完結させることが可能となっています。

メリットその②効率的な行政サービスを提供できる。

先述したように、国民総背番号制(マイナンバー制度)では、全国のあらゆる公的機関において、国民一人ひとりを同一の番号で管理しています。施行前は、各機関が個々の管理番号を使って国民を管理していたため、公的機関内の情報のやり取りや手続きはとても複雑で、多くの時間と手間がかかりました。

具体的には、住民票には「住民登録番号」、年金には「基礎年金番号」、健康保険には「保険者番号」、そして税金には「整理番号」と、それぞれ異なる番号が割り振られていました。

例えば、○○機関ではAさんを「12345」という番号で管理し、△△機関では同じAさんを「54321」という番号で管理をしていました。そのため。「12345」と「54321」が同一人物なのかどうかを特定するためには、多くの時間と手間がかかり、それを調べるためのコストもかかっていました。

しかし、国民番号(マイナンバー)が導入されたことで、すべての機関で番号が共通して管理されています。これにより効率的な行政サービスを提供できるようになっています。

メリットその③正確な所得を把握できる。

国民総背番号制(マイナンバー制度)の施行以降、国民すべての正確な所得を把握することが可能となっています。個人の所得を把握するだけでなく、税金の未納や不正申告なども把握することができます。

なぜなら、個人番号(マイナンバー)を共通化することで、あらゆる機関と情報を共有することができるからです。所得を正確に把握できれば、適切な課税が行えるので、公平で公正な社会を実現することへとつながります。

メリットその④個人に合った情報を受け取ることができる。

マイナンバー制度の導入と同時に、マイナンバー制度に関する個人のポータルサイト「マイポータル」が開設されました。マイポータルでは、個人に合った必要な情報を受け取ることができます。マイポータルでは次のようなことが行えます。

・自己情報表示ができる。(自治体が保有している自分の個人情報の閲覧)
・必要な情報が受け取れる。(予防接種や受給できる手当など)
・電子決済サービス(納税や社会保障などの決済)
・情報提供などの記録表示ができる。(国や自治体などの間で行われた個人情報のやり取りの記録の閲覧)
・ワンストップサービス(ライフイベントに関する手続き)
・電子私書籍(行政機関や民間事業者が発行する支払証明書などを電子データで受領)

国民総背番号制(マイナンバー制度)のデメリットとは?

デメリットその①なりすまし被害のリスク

国民総背番号制(マイナンバー制度)の施行により、なりすまし被害の可能性がデメリットとして挙げられます。日本よりも早く社会保障番号制度、つまり国民番号(マイナンバー)を導入しているアメリカでは、社会保障局が発行する社会保障番号(Social Security Number)自体が身分証明書としても使われています。

この番号ひとつで、行政分野だけでなく、銀行口座の開設やクレジットカードの作成もできるなど、広い範囲にわたってつかわれています。そのため、社会保障番号を悪用した詐欺などの「なりすまし」が大きな社会問題となっています。なりすましが起きているのは、社会保障番号を本人認証の手段として利用していることが理由として考えられています。

デメリットその②情報流出のリスク

国民番号(マイナンバー)では、社会保障、税、災害対策の分野で個人の効率的な情報管理をしています。つまり、個人番号(マイナンバー)には、個人のさまざま情報が詰まっているのです。

そのため、情報が流出してしまう可能性がデメリットとして挙げられます。現段階では個人番号(マイナンバー)が紐づけられている情報は限定されていますが、年々、紐づけられている情報範囲は拡大しています。

将来的には銀行口座や健康保険証、犯罪歴などとも結びつけることが予定されています。紐づけられている情報が多くなればなるほど、情報が流出したときのリスクも比例にして大きくなるため注意が必要です。

日本の国民総背番号制(マイナンバー制度)は安全か?

国民総背番号制(マイナンバー制度)は、メリットもありますが、「なりすまし被害」や「情報流出」のリスクのデメリットもあります。では、これらのデメリットに対して、どのような対策をとっているのでしょうか?

なりすまし被害リスクへの対応

このような実際的な例から、日本の国民総背番号制(マイナンバー制度)では、個人番号(マイナンバー)を口頭で伝えるだけでの本人認証は行われていません。本人認証を行う際には、必ず本人確認を行うことが法律で義務付けられています。

つまり、個人番号カードや運転免許証、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書を提示し、本人確認をするよう行政の各機関に義務付けています。また、一般企業などの民間事業者も、従業員から個人番号(マイナンバー)をの収集は、規定以外での利用や保管は禁止されています。

このように日本の国民総背番号制(マイナンバー制度)では、徹底的な本人確認を行うことで、なりすまし被害のリスクを最小限にとどめることができると考えられています。

情報流出リスクへの対応

日本では情報流出のリスクを回避するために、制度面とシステム面の双方から徹底的な措置を設けています。特に個人番号(マイナンバー)の情報流出リスクに関しては、「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」を設けています。

【制度面】
・写真付き身分証明書での本人確認
・番号法の規定以外での、特定個人情報の収集と保管を禁止
・番号法の規定以外での、特定個人情報ファイル作成を禁止
・第三者委員会である特定個人情報保護委員会による監視と監督
・特定個人情報が流出したときの罰則
・マイポータルによる情報提供記録の確認

【システム面】
・個人情報の分散を管理
・個人番号を直接持ち、符号を使った情報連携
・アクセス制御による閲覧者の制限と管理
・通信の暗号化

アメリカのマイナンバー「社会保障番号」の歴史から学べること

アメリカのマイナンバー、つまり「社会保障番号」は、1936年に始まりました。社会保障番号という名前の通り、社会保障分野において個人を特定するための番号制度として導入されました。

この番号は9桁で構成されており、アメリカ国民はもちろんのこと、労働許可を持つ在留外国人などにも発行されています。制度導入当時は、14歳前後までが社会保険番号を持っており、それはとても珍しいことでした。

しかし、1986年以降からは、実質的な年齢制限が引き下げとなり、現在では出生と同時に社会保障番号の手続きが行われ交付されています。では、社会保障番号は具体的にどのようなときに利用されているのでしょうか?

アメリカでは子どもの頃から社会保障番号が利用されています。例えば、病院にかかるときなどにも社会保障番号が使われます。使用するときには、ただ口頭で社会保障番号が伝えるだけで本人認証として成立してしまいます。

これには銀行口座の開設やクレジットカードの発行なども、口頭で伝えるだけで成立します。そのため、先述したように、社会保障番号が利用したなりすまし被害が頻繫に発生しており、アメリカの大きな社会問題となっています。

最近は、官公庁や銀行、大手企業などがハッキングされ、社会保障番号が大量に流入した事件も発生しました。

このようなアメリカの社会保障番号で発生しているさまざま被害などを教訓とし、日本の国民総背番号制やマイナンバー制度では、国民番号(マイナンバー)だけで認証するのではなく、顔写真付きの本人認証を行うことを義務としています。

また、アメリカの社会保障番号とは違い、国民総背番号制やマイナンバー制度では、複数分野にわたる使用が禁止されています。つまり、社会保障、税、災害対策の3つの分野だけの使用と限定されています。

マイナンバー制度が施行され早くも5年経過使用としています。現段階ではなりすまし被害や情報流出などの大きな問題が発生することなく、安全管理が行き届いたうえでマイナンバー制度が施行されています。

今後、個人番号(マイナンバー)の役割はさらに拡大していくことが予想されていますが、今後も徹底的な安全管理のもと利用していくことができるでしょう。

まとめ

国民総背番号制(マイナンバー制度)は、国民一人ひとりに個人番号を振り分けることです。一人ひとりの国民を番号で管理することで、国民の利便性や行政の手続きの効率化などさまざまメリットを得ることができますが、なりすまし被害や情報流出などのリスクがあります。

ですから、個人番号(マイナンバー)を扱う行政機関や民間事業者の担当者は、適切な管理のもと慎重に扱うようにしましょう。


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