リース会計とは?従来のリース取引と新基準のリース取引では何が変わった? | 税理士コンシェルジュ

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リース会計とは?従来のリース取引と新基準のリース取引では何が変わった?

2020年8月28日
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リース取引の会計処理に難しさを感じている経理担当者は少なくありません。その理由のひとつに、「リース取引における会計基準」が登場(2008年から)したのが比較的新しいいことと、2019年から「新リース取引基準」が強制適用されたことが関係しています。今回は、従来のリース取引や、新リース会計基準の特徴などについて解説していきます。

リース取引とは?

新リース会計基準が強制適用される前までは、リース取引は「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に大きく分類されていました。

ファイナンス・リース取引とは?

ファイナンス・リース取引とは、リース取引という名前をしていますが、その実態は、お金を借りて、モノを買い、使いながら返済する、という取引のリースのことです。中途解約をすることはできず、モノが故障した時の費用は全て使用者が負担しなければならない、など、個人で購入するスタイルとほぼ変わらないリース取引です。

ファイナンス・リース取引では、オンバランス処理、つまり資産として計上することが義務付けられていました。つまり、計上する金額は、見積購入価格やリース料総額などから算定する必要があります。ただし、ファイナンス・リース取引としてオンバランス処理をするためには、定められている数値基準を満たす必要がありました。

それは①リース期間が雇用年数の75%以上であること、②リース料総額の現在価値が見積購入価格の90%以上であること、の条件を満たしているなら、ファイナンス・リース取引として認められます。

なお、ファイナンス・リース取引は、リース契約終了時後の借り手の所有権の移転により、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の区分されています。それぞれ次のような特徴があります。

・所有権移転ファイナンス・リース取引
所有権移転ファイナンス・リース取引とは、リース期間が満了するとその資産(モノ)をもらえるリース取引です。つまり、個人でローンを組んで資産(モノ)を購入するのとと全く同じ経済的実態と言えます。さらに、会計処理もローンを組んで購入する方法と全く同じ会計処理を行います。

・所有権移転外ファイナンス・リース取引
所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、契約したリース料を全て支払った後、その資産(モノ)をもらうことができないリース取引です。契約を続けるためには、再リース料を支払ったり、資産(モノ)を受け取るためには買い取ったりなどの手続きが必要です。

日本のリース取引の場合は、ほとんどのケースが所有権移転外ファイナンス・リース取引が行われています。

オペレーティング・リース取引とは?

オペレーティング・リース取引とは、誰かから借りているリース取引です。契約が終了した後は、相手に資産(モノ)を返却したり、故障した場合は貸主が修理してくれます。つまり、ただ借りているだけの状態の取引と言えます。

借り手が支払ったリース料は、全額賃貸料として経費として計上し、原則、オフバランス処理、つまり資産に計上しない会計処理をすることが定められています。

2019年1月1日から「新リース会計基準」が適用されている!

2019年1月1日より、国際財務報告基準「IFRS(International Financial Reporting Standards)」と、米国会計基準「USGAAP(US Generally Accepted Accounting Principles )」において、「新リース会計基準」が強制適用されています。

日本でも新リース会計基準を日本の会計基準に適用させる動きが前向きに検討されています。すでに新リース会計基準を適用している企業もありますが、まだ適用していない企業もあります。しかし、早ければ2023年には新リース会計基準が強制的に適用されることが予定されています。

新リース会計基準が強制適用することになれば、リース契約の把握したり、資産計上するために業務状態を見直したりなど、実務的な作業が大幅に増えるだけでなく、会社経営そのものに大きな影響を与えることが考えられます。

また新リース会計基準適用に向けて、システムの改修も必要となることでしょう。いずれにせよ、新リース会計基準をまだ適用させていないのであれば、残されている時間に対応作業を前向きに着手することができるでしょう。

では、「新リース会計基準」では、何が変わるのでしょうか?新リース会計基準のは概要についてみていきましょう。

IFRS16号による新基準のリース取引とは?

ここまでは従来のリース取引についてみてきました。では、2019年1月1日以降から強制適用となっている新リース会計基準には、どのような特徴があるのでしょうか?従来のリース取引にどのような変更が加えられたのでしょうか?

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止

IFRS16号による新基準のリース取引では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースへ分類することが廃止されました。数値基準によって判断することがなくなり、新しいリース判断基準が採用されています。

新基準では、原則、すべてのリースが資産として計上するオンバランス処理として計上することになっています。つまり、今までは売買もしくは賃貸かにより、オンバランスとオフバランスが判断されていましたが、新基準ではすべてのリースがオンバランスになります。

ただし、例外ケースもあります。それは少額なリース取引や短期リース取引の場合です。これらは新基準のリースに該当しているとしても、資産計上しないオフバランス処理が認められています。

なお、この処理は借り手側にだけ適用されるものであり、貸し手側は従来通り、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分して会計処理をすることになっています。

オフバランス処理ができる例外ケース

前述したように、少額なリース取引や短期リース取引の場合は、新基準のリースに該当しているとしても、資産計上しないオフバランス処理が行えます。少額なリース取引とはIASBの基準では5,000ドル以下、短期リース取引とはリース期間が12ヶ月以内、のものが該当します。

貸借対照表上に見られる変化

今までは資産へ計上しないオフバランス処理をしてきましたが、新リース会計基準が適用されることで、資産へ計上するオンバランス処理となります。したがって、貸借対照表上では、リース負債の額が増えるようになります。その結果、総資産額が増額するため、自己資本比率が下がります。なお、資産は「使用権資産」、負債は「リース負債」として計上します。

損益計算書上に見られる変化

今まではオペレーティング・リースで全額費用として処理してきたリース料が、新リース会計基準ではリースの「減価償却費」と「支払利息費用」で処理することになります。つまり、一度に費用として処理する金額が、減少するということです。そのため、営業利益が上がるようになります。さらに支払利息が営業外費用に表示されることも、営業利益が上がる理由のひとつになります。

リース期間の考え方

リースの契約期間は、契約書に記載された期間と一般的には考えられていますが、新リース会計基準ではそれが当てはまらないことがあります。新リース会計基準では、法的に解約不能な期間だけでなく、合理的に延長が確実な期間もリース契約期間として認められています。

具体的には、「解約不能期間」「延長オプション期間」「解約オプション期間」を合わせて計算する必要があります。契約期間はリース資産の減価償却額に直結に影響を与えるため、特に多くのモノを賃貸借している場合は、貸借対照表にも大きな影響を与えます。

日本の会計基準に新リース会計基準を導入するメリットとは?

日本の会計基準は、会計士や財務諸表作成者、アナリスト、大学教授などで構成される、企業会計基準委員会「ASBJ(Accounting Standards Board of Japan)」という組織が作成しています。ASBJは、新リース会計基準を日本の会計基準に導入する3つのメリットを挙げています。

メリット①国際的な会計基準と整合性を図れるため、財務諸表間の比較可能性へとつながる。

メリット②財務諸表利用者の財務分析に関しては、オペレーティング・リースに関する調整が行われているため、新リース会計基準を導入することで、資産や負債の計上に関するニーズを得ることができる。

メリット③従来の会計基準を継続し続けるなら、重要な負債がオフバランスとなっているという指摘を国際的に受ける可能性がある。しかし、新リース会計基準を導入するなら、信頼性を失うリスクを回避できる。

新リース会計基準を導入することで得られるメリットからも、日本の会計基準にも新リース会計基準が導入されることがほぼ確実であるといえるでしょう。

新リース会計基準の導入に向けて企業が今できる対策とは?

新リース会計基準の強制導入に向けて、企業の経理担当者は、今どのような対策を打つことができるでしょうか?大きく2つのこと、それは①リース取引している物件をすべて把握すること、②リース取引の管理をルール化することです。

①リース取引している物件をすべて把握すること
まず社内でリース取引をしている物件と、それを使用している部署を調査し、すべてを把握する必要があります。なぜなら、新リース会計基準では、商用車や事務機器、不動産の賃貸などもリース取引として計上することが求められているからです。

レンタル取引に関しては、担当部署で管理や伝票作成をしているため、経理部門が正確に把握できていない、というケースもよく見られます。リース取引の数が多ければ、それに比例して多くの時間を必要としますので、早めにリース取引の現状をすべて把握しておくことは大切です。

②リース取引の管理をルール化すること
リース取引の現状をすべて把握した後は、その作業をどの部署が行うかなどリース取引の管理をルール化しましょう。そうすれば管理をしやすくなり、状況を明確に把握することが容易となります。

まとめ

新リース会計基準は、経理業務はもちろん、会社経営自体にも大きな影響を与えることが予想されています。リース取引をオンバランス処理することで、貸借対照表や損益計算書などの決算書類にも影響が出てきます。また勘定科目や会計処理方法なども変わります。

ですから、自社のリース取引をすべて把握し、一度整理してみることは大切です。自社だけで行うことが難しいなら、監査法人や小紋会計事務所などに相談してみましょう。


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