粗利益とは?粗利益以外の4つの利益との違いは?【5つの利益と計算方法】 | 税理士コンシェルジュ

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粗利益とは?粗利益以外の4つの利益との違いは?【5つの利益と計算方法】

2020年9月17日
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「粗利益(あらりえき)」とは、企業に作成義務が課せられている財務諸表のひとつである損益計算書に登場する5つの利益の中のひとつです。損益計算書上では、粗利益は「売上総利益」と呼ばれています。この記事では、粗利益をはじめとした5つの利益は何を意味するか、また計算方法などについて解説していきます。

粗利益とは?

「粗利益(あらりえき)」とは、売上から売上原価や製造原価を引いた利益のことで、損益計算書上では「売上総利益」と呼ばれています。会計上では売上総利益と記載しますが、ビジネスの現場では「粗利(あらり)」と呼ばれるのが一般的な傾向となっています。いずれにせよ、粗利益と売上総利益は同じものを意味します。

損益計算書とは?

損益計算書とは、一定期間における企業の純粋な利益を示す計算書のことです。会社全体で得た利益を粗利益、つまり「売上総利益」をはじめとし、「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「当期純利益」の5つの利益で区分しています。

なお、損益計算書は、「決算書類」のひとつです。決算書は「損益計算書」をはじめとし、「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書」などで構成されています。

その中でも、利益の生み出し方を示す「損益計算書」、お金の調達方法と運用方法を示す「貸借対照表」、実際の現金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」の3種類の計算書は重要な書類として扱われており、「財務三表」と呼ばれています。

損益計算書上の5つの利益

企業が最終的に得られる利益、つまり儲けはひとつです。しかし、会計上では利益を5つに区分し、段階ごとに企業の営業成績を細かく数字で表したものが損益計算書です。損益計算書上の5つの利益とは、企業の粗利である「売上総利益」、そこから費用を差引いた「営業利益」がまず記載されています。

次に、本業以外の収益と費用を示す「経常利益」、臨時で発生した利益と損益を含めた事業活動の利益「税引前当期利益」、税金などを差引いた今期の純粋な利益を示す「当期純利益」が記載されています。

売上総利益(粗利益)

売上総利益、つまり粗利益では、企業が本業でどのくらいの利益を出したのかを把握することができます。

【粗利益の計算方法】
売上から売上原価・製造原価を差引き、売上総利益を求めることができます。つまり、「粗利益(売上総利益)=売上高-売上原価・製造原価」という計算式になります。たとえば、5,000円の商品が売れて、売上原価が2,000円の場合は、粗利益は3,000円ということになります。

計算式上の売上原価と製造原価に関しては、小売業では人件費は「販売費」に該当するため、売上原価には含めません。一方、製造業では「人件費」を製造原価に含めます。また、製造業の場合は、製品の売上から製造原価を差引いた金額が粗利益となります。粗利益が高ければ高いほど、本業で儲けている、と言えます。

【売上高の計算方法】
では、売上原価はどのようなものを指すのでしょうか?売上原価とは、前年度に売れ残った分(在庫)と、当該年度に仕入れた分の金額を合算し、年度末に売れ残った分の金額を差し引いた額のことです。つまり、「売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」という計算式になります。

【売上と粗利益の違いとは?】
売上と粗利益の数値は、尊敬計算上では近い位置関係にいます。では、両者の違いとは何でしょうか?売上、つまり売上高は、企業が商品やサービスなどを販売したことで得た金額(代金)のことです。この段階では、企業が商品やサービスを提供するまでにかかった費用は含まれていません。

一方、粗利益になると、売上の金額から費用などを差引いた売上原価を差し引いた数値になります。そのため、粗利益の金額は売上原価の分を差し引かれた金額になるので、売上金額よりも小さな数字になります。

営業利益

営業利益とは、粗利益から販売管理費を差し引いた利益のことです。つまり、企業が本業の主力の商品やサービスを提供して儲けた利益のことです。売上に対して営業利益が高い場合は、「営業利益が高い」ことを意味するため、本業での収益を上げる力が高い、と判断されます。

【営業利益の計算方法】
「営業利益=粗利益-販売管理費」という計算式で求めます。販売管理費とは、「販売費」と「一般管理費」のことで、勘定科目上では特に区分をされておらす、同じように扱われています。

販売費管理費には、商品やサービスの広告宣伝費、社員や従業員に支払う人件費(給与や報酬)、通勤費、出張などの交通費、通信費、接待や講演会などの交際費などが挙げられます。

経常利益

経常利益とは、本業での利益(営業利益)と、営業外収益を足し、営業費用を差引いたものです。つまり、本業や株の売却益、本業以外の事業で稼いだ利益も含めた全体の利益の中で、企業がいつも通りの活動の中で儲けた利益のことです。

これには何かのイベントや災害など臨時で、つまり一時的に発生した利益や損失などは含まれません。したがって、企業が行っているすべての活動で、どのくらいの利益を得ているかを把握することができます。

【経常利益の計算方法】
経常利益は、「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用」という計算式で算出できます。営業利益とは、先述したように企業が本業で儲けた利益のことです。営業外収益とは、企業が保有する株券の配当金や預貯金の受取利息や受取配当金など、本業以外で得た収益のことです。

そのほかにも、保有していた機械やパソコンなどを買収したときに入る収益や、所有している土地の賃貸料なども営業外収益に該当します。つまり、本業が小売業だとしても、不動産を保有して賃貸料を得ているなら、不動産賃貸の利益は営業外収益とみなされます。

一方、営業外費用とは、支払利息や有価証券の売却の際に発生した損などが該当します。このように経常利益には、特別に発生した利益や損失は含まれません。例えば、ある年度に保有してた土地を売却して利益を得た場合は、その年だけに発生する特別な利益です。ですから、営業外収益には含まれません。このように経常利益は、通常時の企業の収益力を示すものです。

税引前当期利益

税引前当期純利益とは、その名前の通り、当該期に支払う法人税・住民税・事業税などの税金を差し引く前の利益のことです。特別利益と足して、特別損失を差引いた後の利益が税引前当期純利益になります。この利益からは、税金を支払う前の時点で、企業にどのくらいの利益があるかを把握することができます。

【税引前当期純利益の計算方法】
税引前当期純利益は、「税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失」という計算式で求めます。特別利益とは、通常は発生しない、臨時的に発生した利益のことです。

これには不動産やビル、土地などの固定資産の売却益などが特別利益に該当します。特別損失とは、固定資産を売却した際に発生した損のことです。これには災害や火災、盗難などで被った損失なども該当します。

当期純利益

当期純利益とは、1つの決算期における企業の収益全体から、費用や各種税金などをすべて差引き、最終的に残った利益のことです。当期純利益は、「税引後当期純利益」または「純利益」などとも呼ばれています。

最終的に出される数字がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字で表示されます。当期純利益では、企業が当期の活動でどのくらいの利益を得たか、また従業員にどのくらい賞与や報酬をだせるかを算出するための指標となります。

【当期純利益の計算方法】
当期純利益は、「当期純利益=税引前当期純利益-費用-税金(法人税+法人住民税+法人事業税など)」という計算式で求めます。当期純利益は、当期の企業の活動で、どのくらいの利益が出たかが分かるだけでなく、株式投資をする際の目安としてもよく使われています。

【当期純利益で把握できる株価収益率(PER)】
株式投資の目安として、当期純利益を指標として使用する場合、株価を一株あたりを当期純利益で乗ずると「株価収益率(PER)」を求めることができます。株価収益率が分かれば、現在の株価が割高か、もしくは割安かを判断することができます。

【当期純利益で把握できる自己資本利益率(ROE)】
また、当期純利益を使って、企業が自己資本でどれだけ効率よく利益を出したかを把握できる「自己資本利益率(ROE)」を求めることもできます。

自己資本利益率(ROE)は、「自己資本利益率(ROE)%=当期純利益÷自己資本×100」という計算式で算出できます。自己資本利益率が高ければ、自己資本を効率よく使って稼ぐ企業と判断されます。

ただし、自己資本利益率には、当期純利益に特別利益や特別損失が含まれているため、通常の活動で出る経常利益とは違います。つまり、来期以降もその数値が必ず出るという保証はありません。ですから、企業の信用度を図るための目安として使うことは控えましょう。

粗利益に最も注目すべき理由とは?

ビジネスの現場では、5つの利益の中でも、特に「粗利益」に注目すべき、と言われています。なぜ、粗利益に注目すべきなのでしょうか?それには次の2つの理由が関係しています。

理由①粗利益は企業の基本となる利益だから

事業を運営する上で必ず発生する、家賃や水道光熱費、通信費、人件費などの経費は、すべて企業で儲けた利益で支払われます。そして、粗利益は、本業で儲けた純粋な利益、つまり必ず手元に残る利益のことです。ですから、粗利益は手元に残る、企業の基本となる利益なので最も重要な指標と言えます。

理由②粗利益は企業の価値や競争力の判断基準となるから

粗利益を儲けていない、ということは、本業である商品や製品、サービスが多くの方に受け入れてもらえていない、ことを意味します。つまり、商品やサービスの価値がない、とも判断できます。

一方、粗利益が高ければ高いほど、本業で儲けているということです。このように粗利益を見ることで、企業の価値や競争力を判断することができ、必要であれば改善策を打つことができます。

粗利益を高める方法とは?

企業の収益性を高めて、事業を安定されることは、粗利益を高めることにつながります。では、どのように粗利益を高めることができるのでしょうか?

それには2つの方法、つまり、①商品やサービスの単価を上げる、②売上原価を下げる、が挙げられます。ではそれぞれの方法について詳しくみていきましょう。

粗利益を高める方法その①商品やサービスの単価を上げる

前述したように、粗利益をみることで、商品やサービスが社会の中でどれくらい価値があるかを判断することができます。また競合他社との競争力を見極める判断基準ともなります。そこで、競合他社にはない不可価値を高め、単価を上げるなら、粗利益を高めることへとつながります。

競合他社が持っていない何かを不可価値として加え、消費者が「価格が多少高くても、この商品を買いたい!」「この企業からこの製品を仕入れたい!」と思われるようなモノを提供できれば、問題なく原価に利益分を上乗せし、単価を上げることができるでしょう。

粗利益を高める方法その②売上原価を下げる

商品やサービスに不可価値を加えて単価を上げるのではなく、その逆として、売上原価を下げることも粗利益を高めることにつながります。売上原価を下げるために、材料費や加工費などに無駄な出費はないか、今一度見直してみることができるでしょう。また、製造や加工にかかる工程を見直し、人件費にかかるコストを削減できるかもしれません。

経常利益も重要!

経常利益も粗利益同様、重要です。なぜなら、経常利益は企業の持つ実力を示した利益を示しているからです。経常利益は、借入にかかる費用も考慮した利益です。そのため、資金繰りが悪化している場合は、通常、経常利益は低くなります。もちろん、営業利益が低い状態でも資金繰りは上手くいっているケースはあります。

いずれにせよ、経常利益はその企業の実力を判断する基準となります。逆を言えば、自社の経常利益をみることで、自社の総合的な力を把握することができ、必要であれば改善点を見つけることができます。今後、事業をどのように展開させるべきかも把握できる重要な指標と言えるでしょう。

損益計算書が必要な理由とは?

前述したように、損益計算書は決算書のひとつです。決算とは、企業の1年間の収益と費用を計算し、利益や損失を数値として「決算書」にすることです。企業は決算をすることで、自社の財務状態や経営成績を把握できます。

ここ日本では、事業規模に関係なく、すべての法人に対して、1年に1度決算を行い、決算書を税務署へ提出することを義務付けています。では、なぜ損益計算書を含む決算書を作成する必要があるのでしょうか?

それは、自社の経営状況を、取引先の企業や金融機関、株主や債権者に示すために、開示義務が法人には課せられているからです。また、確定申告をする際にも、決算書を提出することが求められています。

さらに、決算書を作成することで、自社の経営状況を数値で把握することも目的のひとつです。このように、損益計算書を含めた計算書は、企業が事業を健全に運営していくために欠かすことができない書類と言えます。

まとめ

決算書のひとつである損益計算書の利益を読みとくことができれば、自社の業績を把握することはもちろん、業界内での業績や順位なども分かるようになれます。利益は、「粗利益」とも呼ばれる「売上総利益」をはじめとし、「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「当期純利益」の5つで細かく分類されています。

・粗利益(売上総利益):純利益
・営業利益:本業の商品やサービスで稼いだ利益
・経常利益:本業と本業以外の事業で稼いだ利益のうち、企業のいつも通りの活動で生まれる利益
・税引前当期純利益:当該期に支払う税金を差し引く前の利益(特別利益や特別損失を含む)
・当期純利益:1つの決算期の企業の収益全体から費用や税金を差し引き、最終的に手元に残った利益

これらを5つの利益をしっかり理解し、企業の利益が数値でまとめられている損益計算書を読みとくことができるようにしていきましょう。


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