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企業価値を算定する「dcf法」はどんな手法?dcf法の基礎知識

2020年5月26日
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「DCF法」とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略称で、企業分析を行う企業価格算定の手法のひとつです。キャッシュフロー全体を割引率で割引いて企業価値を算出していきます。この記事では、DCFの基礎知識をはじめとし、キャッシュフローや計算方法などについて分かりやすく解説していきます。

DCF法とは?

DCF法の概要

企業の中心となっているのは「事業」です。では、事業の価値はどのように決まるのでしょうか?そのひとつの考え方として、その事業が生み出す将来のキャッシュフロー(収入)に着目することが挙げられます。つまり、事業が将来生み出すであろう利益(お金)に注目し、「将来キャッシュフローを得る権利は現時点でどのくらいの価値があるか?」を考えることです。

その際、将来のキャッシュフローを現在の価値に換算するときの換算計算が「割引計算」のことです。つまり、DCF法では、企業の価値を算出する際に、割引キャッシュフロー、つまり、その事業が生み出す将来のキャッシュフロー(収入)に注目する考え方をしています。そして、事業が生み出すキャッシュフローとは、最終的には「債権者と株主に分配可能なキャッシュフロー」のことで、「フリーキャッシュフロー」のことです。

なお、DCF法は、不動産の価値を鑑定評価するときにも使われる手法のひとつです。つまり、企業だけに限らず、資産全般を合理的に評価する際に活用される手法として幅広く利用されています。

DCF法の意味

DCF法とは、英語の「Discount Cash Flow」の頭文字をとったもので、直訳すると「割引計算されたキャッシュフロー」と意味になります。日本語では「キャッシュフロー割引」呼ばれる企業の価値を算出する手法のことです。DCF法による企業価値算出式は、「企業が将来生み出すフリーキャッシュフローの期待値を加重平均資本コストで割引いた現在価値=企業価値」とみなしています。

DCF法の3つの基礎的な考え方

DCF法は、企業分析には欠かすことができないもっとも合理的な手法と評価されています。それには、次の3つの基礎的な考え方が関係しています。

①モノの経済価値は「将来得られるキャッシュフロー」が対象となる

DCF法では、モノの経済価値は、将来得られるキャッシュフロー(収入)によって決まる、という考え方をしています。つまり、今の稼ぎの状態ではなく、今後稼いでくれる事業の方が価値があるという見方です。したがって、現在、事業の稼ぎがあったとしても、今後稼げる見込みのない事業は、経済価値が低くなってしまうのです。このような考え方は、「インカム・アプローチ」と言われています。

②将来の収入は割引計算で現金の現金価値で換算することが可能

DCF法の2つ目の基礎的な考え方は、割引計算をすることで現在価値を図ることです。例えが、お金を誰かに貸す場合は、利子を設定して貸します。利子は、お金の貸し借りとその時間に対しての対価であり、借りた人は貸した人に払うべき当然の対価と言えます。

仮に100万円を5%の利子で貸した場合は、1年後には105万円になっています。DCF法では、現在の100万円と1年後の105万円は、同じ価値であるという考え方をしています。つまり、1年後の価値は、現在の価値の1.05倍になるということです。

③割引率は投資のリスクに応じて変わってくる

DCF法の3つ目の基礎的な考え方には、割引計算をする際に利用する割引率は、投資のリスクに応じて変わってくるという見方です。なぜなら、割引率は借金における利率のようなものなので、リスクが高い投資にほど高い倍率も比例して高くなるからです。

DCF法では、これら3つの基礎的な考え方を基として、事業の価値を評価していきます。このように、お金を生み出すことを一番とする事業の経済価値を測るためには、DCF法が一番合理的であると言われています。では、DCF法で割引の対象となる「将来のキャッシュフロー」である「フリーキャッシュフロー」は、どのように算出できるのでしょうか?見てみましょう。

FCF(フリーキャッシュフロー)とは?

DCF法を理解するためには、フリーキャッシュフロー(FCF)についても理解する必要があります。上記でも少し触れましたが、企業価値を求める場合のフリーキャッシュフローとは、政府に税金を納め、事業に必要な投資をした後、「債権者と株主に分配可能なキャッシュフロー」のことです。

では、どのようにフリーキャッシュフローを求めることができるのでしょうか?まず営業利益から法人税を差引いた純利益に減価償却費をプラスします。その後、売上債権と棚卸資産と借入債務の差額である運転資本の増加額を、先ほど控除した営業キャッシュフローから差し引きます。さらに、固定資産に対する投資の設備投資額を差引いたものがフリーキャッシュフローになります。

つまり、「営業利益×(1-法人税率)+減価償却費-運転資本増加額-設備投資額=フリーキャッシュフロー」という計算式になります。

フリーキャッシュフローを計算する際の注意点

フリーキャッシュフローを計算する際には、特に支払利息、キャッシュフローへの加算、資産コストへの注意が必要です。

・支払利息について
フリーキャッシュフローを計算するときは、支払利息を差引かないようにしましょう。なぜなら、企業価値を求める際に、事業全体のキャッシュフローを計算するからです。

・キャッシュフローへの加算について
減価償却費などの現金支出を伴わない費用の場合は、キャッシュフローへ加算します。

・資産コストについて
法人税額は、投資家に還元されない部分ですが、キャッシュフローで控除する際には、実際の法人税額をそのまま差引くのではなく、営業利益に「1-法人税額」をかけて求めてます。

また、負債がある企業に関しては、支払利息の節税効果が発生するため、債権者と株主に対してのキャッシュフローが増加します。したがって、その節税効果を割引率、つまり、資本コストで調整する必要があります。なお、負債の有無にかかわらず、株主資本100%の場合のキャッシュフローを用いて計算することになります。

このようにDCF法におけるキャッシュフロー計算は、税務会計上の利益の計算方法とは違うので注意しましょう。また、キャッシュフロー計算書のみしかない場合は、「営業活動によるキャッシュフロー+投資活動によるキャッシュフロー+利息の支払額×(1-法人税率)=フリーキャッシュフロー」という計算式で求めることができます。

ただし、DCF法における企業価格評価を求めるフリーキャッシュフローは、債権者と株主に分配されるキャッシュフローですから、利息の支払額を控除する前の金額であるべきことを念頭においておきましょう。

資産コスト(割引率)の求め方とは?

DCF法で使われる資本コストは、「加重平均資本コスト(WACC/ワック)」と呼ばれています。加重平均とは、「株式投資に対する資本コスト」と「借金に対する負債資本コスト」を加重平均するということです。これは、会社が行った資金調達全体に対する資本コストのこととも言えます。

この資本コストは、投資を受けている人が求められている還元率のことですが、資金調達が「株式投資」によるものか、それとも「借金」によるものなのか、投資を受けている形よって求められている還元率が大幅に異なってきます。したがって、複数の調達ルートで資金調達をし、事業に投資している場合は、2種類の資本コストを加重平均する必要があります。

DCF法で株式の価値を計算する方法とは?

DCF法で株式の価値を計算する際には、次のような流れで行います。

①数年分のフリーキャッシュフローの見積り

DCF法は将来のキャッシュフローの割引計算をするものですから、毎年のキャッシュフローの予測をすることから始めます。まず3~5年分の事業計画を作成します。その後、調整が必要であれば行い、フリーキャッシュフローを計算します。

損益を計算する際には、税金や各年の減価償却費や設備投資額なども加え、設備投資後の獲得キャッシュフロー(FCF)の計算を行います。FCFの見積もりをすることは、DCF法の基礎とも言えるでしょう。そして、当たり前のことですが、事業の将来をポジティブに考えるか、それとも保守的に考えるかによって、考え方次第で計算結果が変わってきます。

②割引率の設定

将来のキャッシュフローの見積をした後は、割引率の設定をします。割引率の設定は、次のような手順で行います。

手順1、CAPM(キャップエム)の公式による計算
まずCAPM(Capital Asset Pricing Modelの略)の公式を使って自己資本コストを求めます。CAPMの公式とは「株主資本コスト(rE)=リスクフリー・レート(R(f))+ベータ(β)×マーケット・リスク・プレミアム(R(p))」です。リスクフリー・レート(R(f))とは、10年物国債利回りで使うのが一般的です。

ベータ(β)は、個別資産の市場全体に対する感応度のことで、対象会社が非上場会社の場合、類似公開会社のベータ(β)を参考とします。マーケット・リスクプレミアム(R(p))は、投資家の期待する株式に対するリスクプレミアムのことです。国債よりどれだけ高い利回りを提供できるかを示す指標です。

手順2、サイズプレミアムを加算し、自己資本コストの確定
自己資本コストを確定させるためには、サイズプレミアムを加算させる必要があります。つまり、「CAPM+サイズプレミアム=採用する自己資本コスト」という計算式になります。

手順3、資本コストの加重平均を算出
自己資本コストが確定した後は、負債の資本コストを加算しで加重平均資本コスト(WACC)を算出します。加重平均資本コストの公式とは、「株主資本コスト×株主資本/(有利子負債 + 株主資本)+負債コスト×(1-実効税率)×有利子負債/有利子負債+株主資本=WACC(%)」という計算式です。

③ターミナルバリューの算出

割引率が確定した後は、ターミナルバリュー(Terminal Value)を算出します。ターミナルバリューは、安定した事業成長が永久に続くと仮定した場合のキャッシュフロー合計の現在価値仮定のことです。「残存価値(ターミナル・バリュー)=予測最終年度の次年度のキャッシュフロー/割引率(r)」という計算式で求めることができます。

④毎年のキャッシュフローとターミナルバリューの割引計算

毎年のキャッシュフローとターミナルバリューが算出できた後は、割引計算をします。なお、割引計算には「期末主義」と「期央主義」という2種類の考え方があります。期末主義とは、会社の決算は期末締めなので、株主にとっては期末にキャッシュフローが発生すると考えたほうが理論上正しいという考え方です。

一方、期央主義とは、事業のキャッシュフローは年間を通じて発生するため、期の真ん中(6ヶ月目)で発生したと考える方が実態に近いという考え方をしています。

⑤非事業の資産や有利子負債の調整と株価の算出

④で算出されたものは「事業価値」ですから、株価に換算するためには調整をする必要があります。まず企業価値を算出するために、事業価値に非事業資産等を加算します。その後、企業価値から有利子負債を控除し、株主価値を求めます。そして最後に、株主価値を発行済株式総数で割り、1株当たりの株価をを算出します。

⑥必要な調整と計算結果の見直し

⑤で算出した1株当たりの株価を基準とし、必要であれば調整を加えていきます。具体的には、「マイノリティディスカウント」を検討することができるかもしれません。通常、株式は50%以上保有していれば、経営に意見を述べることをはじめとし、経営者をかえることも可能です。

しかし、株式を数パーセントしか保有していない場合は、経営について意見を述べることはできず、経営の結果を受け取ることしかできません。そのため、株式の保有率が低い場合は、1株当たりの価値も少ないと考え、マイノリティディスカウントを反映させるのです。

また、評価対象の株式が非上場のときは、「非流動性ディスカウント」という減額調整を加えることができます。非流動性ディスカウントとは、上場企業であればいつでも時価相当で簡単に売ることが可能ですが、非上場企業では買い手を見つけることは容易でないうえ、買い叩きに遭うリスクも高い、という考え方をしています。通常、30%程度の減額を加えて調整をすることが一般的となっています。

必要な調整が済んだら、最後に計算結果を見直して、妥当な水準に収まっているかどうかを考えます。もし何かしらの違和感を感じるのであれば、調整を加えていきましょう。

まとめ

企業価値を算定する手法のひとつ「DCF法」についてみてきました。実在している企業の価値を評価するためには、将来のキャッシュフローを見据え、割引率となる資本コストを設定し、どのように成長するかを見込んで仮定しながら計算する必要があります。企業価値を算出することは複雑かもしれませんが、DCF法の基礎的な考え方をしっかり理解するなら、シンプルな論理に基づいているので企業分析がしやすくなるでしょう。

まずは基礎的な考え方をしっかり理解することからはじめてみましょう。そして、計算方法について分からないことがある場合は、専門家である税理士に相談されることをおすすめします。


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