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損益分岐点とは?損益分岐点から利益が出やすくなる経営分析をする方法

2020年7月10日
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損益分岐点とは、黒字経営をするうえで欠かすことができない経営指標のひとつです。黒字経営のためには、損益分岐点に関して具体的な数値目標を持つことがとても重要です。損益分岐点売上高を把握すれば、必要最低限の売上高と具体的な数値目標が分かります。この記事では、損益分岐点に関する基礎知識について分かりやすく解説していきます。

損益分岐点とは?

損益分岐点を理解するには、まず会計や利益などに頻繁に出てくる「利益」について考えてみることができるかもしれません。利益とは、ひと言でまとめるなら、事業の儲けのことです。売上の合計から、売上を得るためにかかった費用を差し引けば、会社の儲けが分かります。

つまり、「利益=売上高-費用」という計算式で求めることができます。売上高よりも費用が多くなれば赤字(マイナス)、それとは逆に、利益が黒字(プラス)になれば、会社が儲かっていることになります。

損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなる指標のひとつ、つまり、その名前の通り、「損」と「益」の分岐点となる売上高のことです。損益分岐点は、「損益分岐点売上高」とも呼ばれており、売上と総費用が等しく、プラスマイナスゼロのときの売上高とも言えます。つまり、売上高と費用がちょうどゼロになる分岐点、つまりポイントのことです。

売上高が損益分岐点を超えると利益がでている、それとは反対に、損益分岐点に満たないと損失が生じていることを意味します。このように損益分岐点を通して、会社の財務状況が黒字なのか、それとも赤字なのかを把握できるため、「採算点」とも言われています。

事業をしている方であれば、「採算が合う」という言葉を見聞きする機会が多いことでしょう。この言葉を言い換えるなら、「損益分岐点(採算点)以上に到達している」ということになり、企業の現状がよい、という意味があります。

損益分岐点の算出方法とは?

損益分岐点を求めるためには、次のような手順で行います。

ステップ①費用を「変動費」と「固定費」に分類する
まず会社のすべての費用を「変動費」と「固定費」に分類する必要があります。変動費と固定費とは、次のようなものです。

・変動費
変動費とは、売上の増減によって変動する費用のことです。代表的な変動費として、商品の仕入代、材料費、外注費、販売手数料、歩合給などが挙げられます。

・固定費
固定費とは、売上高の増減に関わらず一定にかかる費用のことです。代表的な固定費として、事業所の家賃、水道光熱費、人件費、リース代、自動車税、固定資産税、法定福利費、広告宣伝費、機械設備の費用、減価償却費、支払利息などが挙げられます。

ステップ②「限界利益」を求める
続いて、売上高から変動費を差引き、「限界利益」を求めます。つまり、「限界利益=売上高-変動費」という計算式になります。限界利益は、会社があげた利益のことです。限界利益の額から、全ての固定費を回収できるか判断することができます。

この数値が低い場合は、会社に残すことができる利益が低いと言えます。つまり、会社の営業利益の大小は、固定費を上回る限界利益がどのくらいあるかによって決まります。

ステップ③「限界利益率」を求める
②で求めた限界利益をもとに、限界利益率を求めます。限界利益率は、「限界利益率=限界利益÷売上高」という計算式で求めます。

ステップ④「損益分岐点売上高」を求める
③で求めた限界利益率を用いて、損益分岐点売上高を求めることも可能です。損益分岐点売上高は、「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」という計算式で求めます。

なお、損益分岐点売上高を求める際には、計算する前に③の限界利益率をしっかり確認することが大切です。損益分岐点売上高を下げる必要があるのであれば、変動費や固定費を見直すことができるでしょう。

ステップ④「必要売上高」を求める
損益分岐点からは、会社が赤字を出さないための売上高を把握することができます。健全な事業を経営するうえで、本業で利益を出すための必要な売上高と言えます。損益分岐点を応用するなら、計画利益を達成するための目標利益、つまり必要な売上高も算出することが可能です。必要売上高は、「必要売上高=(計画利益+固定費)÷限界利益率」という算式で求められます。

損益分岐点を計算する際に注意したいこと!

損益分岐点を計算をするときは、ある時点での損益分岐点を求めることになります。あまり変わりのない経営状況であれば、ある時点での損益分岐点を求めたとしても、その後も大きな費用変動がなければ、算出した損益分岐点を参考にして経営戦略を立てることができるでしょう。

しかし、常に変動のビジネスの場合は、注意が必要です。例えば、為替変動の影響で仕入値が一定せず変動費が大きく変わったり、生産量が大幅に増量したため設備の買い足したために固定費が増えたりなど、費用が変動することがあります。つまり、損益分岐点を求めるために分類した変動費と固定費に変化が生じた場合は、その度に損益分岐点も変わってしまいます。

また損益分岐点を計算する際、借入をしている場合は、返済を考慮した損益分岐点を求める必要があります。借入で会計処理をしている場合、変動費と固定費に分類されていないので、損益分岐点を求める際には、何が変動費になり、何が固定費になるかを把握したうえで分類する必要があります。

ですから、正確な損益分岐点を把握するためには、費用が変動する度に、計算をし直す必要があります。常に最新の費用の変化に通じ、正確な損益分岐点を把握しているなら、赤字経営を回避でき、健全な経営状態を維持することができるでしょう。

「目標利益達成売上高」とは?

損益分岐点売上高の数値が分かれば、どのくらいの売上を達成すれば会社の財政状態の現状を維持できるかを把握することが可能です。それに加えて、必要となる利益を獲得するにはどれくらいの売上高が必要とされているのかを求めることも可能です。

つまり、目標として掲げる具体的な目標利益達成売上高を知ることができます。目標利益達成売上高は、「目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率」という計算式で求めます。

「損益分岐点比率」とは?

損益分岐点比率とは、実際の売上高を100%としたときに、損益分岐点売上高が〇%あるのかを示す指標のことです。損益分岐点比率は、数値が低ければ低いほど経営状態が優良と判断されます。

一方、損益分岐点比率が100%の場合は、損益分岐点売上高と同じ数値になるため、ほとんど利益が出ていない状態を意味します。損益分岐点比率から、企業の財政状況を次のように判断することができます。

・損益分岐点比率:60%未満
超優良企業

・損益分岐点比率:60~80%
優良企業

・損益分岐点比率:81~90%
普通企業

・損益分岐点比率:91~100%
損益分岐点企業

・損益分岐点比率:100%超
赤字企業

損益分岐点比率の計算方法

損益分岐点比率は、「損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100」という計算式で求めることができます。

「安全余裕率」とは?

安全余裕率とは、実際の売上高を100%としたときに、実際の売上高と損益分岐点の差が〇%あるかを計算した指標のことです。数値が高ければ高いほど、安全の高い経営状況と判断できます。

安全余裕率の計算方法

安全余裕率は、「安全余裕率(%)=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100」という計算式で求めます。

損益分岐点率と安全余裕率の関係とは?

損益分岐点率と安全余裕率は、その比率を合わせると必ず100%になる「補数関係」にいます。わざわざ計算する必要はありませんが、確認するために計算することができるでしょう。
つまり、「安全余裕率=100-損益分岐点率(%)」「損益分岐点比率=100-安全余裕率(%)」という計算式が成り立ちます。

損益分岐点分析とは?

「損益分岐点分析」は、「CVD分析」とも呼ばれる管理会計上の分析のひとつです。CVD分析のCVDとは、英語の「Cost(コスト)」「Volume(販売量)」「Profit(利益」の頭文字をとったもので、コスト、販売料、利益を分析することです。

損益分岐点分析で分かることとは?

損益分岐点分析では、上記でみたように、すべての費用を変動費と固定費に分類し、売上高から変動費を差し引いて「限界利益」を求め、それを売上高で割ることで「限界利益率」が分かります。その後、固定費を限界利益率で割り、「損益分岐点売上高」を求めることができます。

損益分岐点分析をするためには、まず「損益分岐点売上高」を把握する必要があります。経営状況が赤字の場合は、売上をどこまで上げれば黒字に転換できるかを知ることができます。そのため、赤字を解消するために、損益分岐点売上高を超えることを目標することができるでしょう。

一方、経営状況が黒字の場合は、売上がどこまで落ちてしまうと赤字に転落してしまうのかが分かります。損益分岐点を分析するなら、上記で解説した「安全余裕率」を確認することができ、どのくらいの余裕があるのかを知ることも可能となります。

損益分岐点を下げる方法とは?

損益分岐点を下げるなら、黒字体質の企業になります。では、どのように損益分岐点を下げることができるでしょうか?損益分岐点を下げるためには、変動費を減らす、固定費を減らす、変動費と固定費の両方を同時に減らす、売上高を上げる、のいずれかを行う必要があります。では、具体的にどのようなことができるのかをみていきましょう。

・変動費を減らす
変動費を減らすために、まず商品や材料などの仕入れ単価を見直してみましょう。仕入先との関係もありますが、単価が下がるなら変動費の減少につながります。また、売上に貢献していない費用を探し、それを削除することで、無駄な出費を防ぐことができます。

・固定費を減らす
固定費を減らすために、まず人件費を見直してみましょう。でも、給与をカットしたり、無理矢理人員を削除したりすることは、従業員のモチベーションの低下につながり、大きなマイナスダメージを与える可能性もあるのでできれば避けたいものです。しかし、余剰人員の削減や赤字となっている事業所や工場を閉鎖することが必要な場合は、慎重に行うようにしましょう。

また、家賃や駐車場などの地代家賃は、出費の多くを占めています。地代家賃を下げることができれば固定費の減少につながりますが、これには大家との交渉が必要となるため、容易なことではありません。ですから、まずは自社だけで削減できる固定費を見つけ、少しでも出費が少なくなるように努力していきましょう。

・売上高を上げる
売上高を上げるなら、それに比例して損益分岐点も下がります。利益も出すことは、健全な経営状況につながります。

損益分岐点が高い状態とは?

損益分岐点が高い、つまり利益が出やすいビジネスとは、固定費が低くて変動費が高い業種です。しかし、すべてのビジネスに言えることですが、利益を上げるためには、売上を相当増やす必要があります。

一方、固定費が高くて変動費が低い業種の場合、最初の利益を出すまでには相当の努力を強いる必要があるでしょう。しかし、変動費が低ければ、一度利益を出して経営が落ち着けば、利益を拡大しやすい傾向にあります。このように損益分岐点から、利益の出かたや傾向も把握することができます。

損益分岐点をExcel(エクセル)で計算するには?

ここまでで損益分岐点を求める計算方法についてみてきました。この指標は求めるだけでなく、求めた指標を活かした経営をすることが最大の目的です。つまり、損益分岐点売上高を把握し、企業経営に上手に活用していく必要があります。

そこで役立つのが、Excelでの計算方法や損益分岐点が一目で分かるようにグラフを作成することです。では、Excelを使った損益分岐点のグラフ作成方法についてみてみましょう。

1、変動費、固定費の計算し、表を作成する
まず固定費と変動費を分類します。その後、合計額を計算します。
なお、費用を、変動費と固定費に分類する作業のことを「固変分解」といいます。

2、表を選択し、面グラフを作成する
画面の上部タブの「挿入」を選択し、「グラフ」から「面」をクリックすると、グラフが表示されます。

3、列と行を入れ替える
グラフに反映する列と行の入れ替え作業をします。
上部メニューの「グラフのデザイン」から「データソース」の選択に入り、「行と列」をクリックします。「OK」をクリックすると、変動費、固定費、売上高がそれぞれ表示されます。

4、面の塗りつぶしを変更する
この段階では、グラフの面が塗りつぶしの状態になっているはずです。変動費、固定費、売上高がどこで交わっているのか分からないため、綿の塗りつぶしを透明に変更します。

まずグラフをクリックします。書式の設定画面が表示されますので、「塗りつぶしなし」の枠線と、下段の「線(単色)」にチェックを入れます。線が見えるようになるはずです。これでグラフは完成となります。売上高と変動費の線が交わる部分が「損益分岐点」とすぐに分かるでしょう。

損益分岐点から具体的な目標を立てましょう!

損益分岐点は、将来の予算策定や投資を判断するうえで大いに役立ちます。なぜなら、損益分岐点を求め、分析することで、目標としたい利益に対しての達成すべき売上高を明確にすることができるからです。そのためには、費用を変動費と固定費に分類し、常に明確にしておくことが欠かせません。業種によって、費用の変動具合は異なるものです。

ですから、自社の費用をよく管理し、最新の数値に基づいて損益分岐点を求め、分析するなら、具体的な目標を定めることが可能となります。是非、会社経営の経営指標のひとつとして、損益分岐点を上手に活用していきましょう。

まとめ

・損益分岐点とは、経営状況から課題や目標を見つけることができる経営指標のひとつ。
・損益分岐点は、「損益分岐点=固定費÷限界利益率」という計算式で求める。
・損益分岐点が下がっているなら、黒字体質の経営状態である。
・損益分岐点を下げるためには、変動費と固定費を減らし、売上高を高める必要がある。
・損益分岐点をExcelのグラフで作成すると活用しやすい。


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