2020年3月21日

初心者でも分かる「貸借対照表」と「損益計算書」の深い関係 

貸借対照表経営者や経理担当者であるなら、「貸借対照表」や「損益計算書」を期末決算の時期に作成する必要があります。したがって、両者の基礎知識を身に着けておくことは基本です。2つの書類は別ものですが、完全に独立しているのではなく、一定のつながりがあります。ですから、片方だけでなく両者を正しく理解することは大切です。この記事では、貸借対照表を中心に損益計算書とのつながりついて詳しく解説していきます。

「貸借対照表」と「損益計算書」の基礎

貸借対照表は「B/S」、損益計算書は「P/L」とも表記されることがあります。これらの書類は、期末決算において作成することが義務付けられている決算書のひとつです。では、それぞれの定義についてさらに詳しくみていきましょう。

貸借対照表(B/S)とは?

貸借対照表は、会社のプラスの資産とマイナスの資産のバランスをまとめた書類です。貸借対照表は別名「バランスシート(Balance Sheet)」と呼ばれており、「B/S」と表記されることがあります。この書類は、数字をみれば、会社の資産や負債などの財政状態を把握することが可能です。なぜなら、勘定科目ごとに合計金額が一覧となっているので、資産、負債、純資産がそれぞれ分けて表形式にされているからです。

資産には、会社が保有している財産すべてが含まれています。これには現金や預金、不動産、売掛金、固定資産などが該当します。負債とは、会社が返済すべきものすべてのことです。これには借入金、支払手形などが挙げられます。純資産には、資産から負債を差し引いた残額、つまり、会社が保有している正味の財産を表しています。

通常、貸借対照表は四半期ごと、もしくは半期ごとなど各決算期末時点に作成することになっています。ただし、企業によっては、財産状況を正確に把握するために、月次決算資料のひとつとして、毎月、貸借対照表を作成するところもあります。

損益計算書(P/L)とは?

損益計算書とは、特定の期間に発生した会社の順利益や損益、費用などが一覧となった決算書です。プロフィット アンド ロス ステイトメント(Profit and Loss statement)を略して、「ピーエル(P/L)」とも呼ばれています。損益計算書は収益、費用、利益の3つで成り立っており、これをみることで会社の業績や収益力を把握することができます。

簡単にまとめるなら、貸借対照表ではある一定時点の財務状態を表しているのに対し、損益計算書では企業の一定期間の業績を表している、ということになります。

貸借対照表でよく使われ勘定科目

では、貸借対照表には、どのような勘定科目が計上されるのでしょうか?資産、負債、純資産の3つで成り立っている貸借対照表の勘定科目を確認していきましょう。

資産 負債
流動資産
現金、預金、売掛金、受取手形、棚卸資産、有価証券、仮払金、前渡金、立替金など

固定資産
土地、建物、車両運搬具など

繰延資産
開業費、開発費など

流動負債
買掛金、支払手形、未払金、預り金、短期借入金など

固定負債
長期借入金、退職給与引当金、社債など

純資産
株主資本
資本金、資本準備金、利益準備金など

評価損益
有価証券評価差額金など

貸借対照表の数字が合わないときの確認方法

貸借対照表を作成した後、左側の借方と右側の貸方の合計が一致しない、ということはよくあります。では、合計の数字が合わないときは、どうすればよいのでしょうか?間違いの原因を発見しやすいポイントをご紹介しましょう。

ポイント1:勘定科目の位置をひとつづつ確認すること

貸借対照表は、資産に分類されている勘定科目は左側、負債と純資産に分類されている勘定科目は右側と決まっています。左右の数字が合わない場合は、まず勘定科目の一をひとつづつ確認してみましょう。

ポイント2:各勘定科目の金額を確認すること

単純な入力ミスや転記ミスで、金額が異常なほど大きくなることがあります。もし貸借対照表の左右の合計の差が異常なほど大きい場合は、各勘定科目の金額をひとつづつ確認してみましょう。また、前期末と当期末の貸借対照表を比較して、間違いの原因を探すこともできます。

ポイント3:仕訳帳や総勘定元帳と比較してみること

上記の2つで間違い箇所を見つけることができたら、総勘定元帳の勘定口座で正しい金額を確認してみましょう。勘定口座には、金額の増減が日付順に記載されていますし、その金額は、仕訳帳をもとに転記されています。まずは総勘定元帳、そして仕訳帳とひとつづつ確認していくなら、どこで間違いが発生したか原因を突き止めることが可能です。その際、借方と貸方が正しい位置にあるか、金額は正しいかどうかを確認しましょう。

貸借対照表と損益計算書に関連性とは?

会社は事業をしている限り、売上や経費などで毎日お金が動いています。つまり、損益計算書のデーターはお金が動く度に変動しています。それに伴い、貸借対照表も売上が上がれば資産が増え、借入金が増えれば負債が増えるなど変動しています。貸借対照表と損益計算書は、一見、全く異なる書類のように見えますが、実は、損益計算書の項目の「当期純利益」と関係しています。

すでにみてきたように、損益計算書は「ある一定期間」の財務状況を示しているのに対し、貸借対照表では企業の資産と負債、純資産の「ある一定時点」を把握することができます。つまり、貸借対照表は、「負債+純資産=資産」で構成されています。したがって、貸借対照表では、会社がどのくらい資産を保有しているか、資産をどのように調達したのか、などを読み取ることができます。

貸借対照表の「利益剰余金」という項目が、損益計算書の「当期純利益」という項目につながっているのです。つまり、貸借対照表の純資産の「利益余剰金」は、損益計算書における「当期純利益」を構成しているということです。

なお、貸借対照表の利益余剰金は、「利益余剰金」と「その他利益余剰金」の2つで構成されていますが、貸借対照表では「当期純利益」の蓄積が「その他利益余剰金」として計上されています。つまり、損益計算書の観点からみると、損益計算書で計算される1年間の利益である当期純利益は、株主に一定の割合で分配され、余った利益が「当期未処分利益」として計上され、それが貸借対照表の「その他利益余剰金」となるということです。

貸借対照表と損益計算書の関係を体系的に理解しよう!

貸借対照表と損益計算書の関係を体系的に理解することはとても大切です。では、上記の点を踏まえて、ひとつの例で考えてみましょう。

資本金1,000円で株式会社を設立したと仮定します。このときは資本金が1,000円ですから、資本が1,000円となります。そのお金は現金として会社の資産になります。したがって、資産である現金が1,000円ということになります。会社はまだ売買(取引)をしていませんので、損益計算書は動いていません。つまり、このようになります。

・貸借対照表

借方 貸方
現金 1,000円 資本金 1,000円

・損益計算書

売上高 0円
当期純利益 0円
原価 0円

その翌月、会社は銀行から1,000円融資を受けます。借り入れは負債ですので、負債が1,000円増えることになり、調達した資金1,000円は会社の資産となり、内訳はすべて現金となります。そして、会社は売買をしていませんので、損益計算書の動きはゼロのままです。つまり、このように計上します。

・貸借対照表

借方 貸方
現金 2,000円 負債 1,000円
資本金 1,000円

さらにその翌月、会社は販売の準備をするため、500円分の商品を仕入れます。取引先に500円支払うことで現金が減り、その代わりに500円分の商品が資産として計上されます。資産は種類がかわっただけで、資産の総額は変わりません。この時点でも売上高はゼロのままなので、損益計算書の動きもゼロのままです。つまり、このように計上できます。

・貸借対照表

借方 貸方
現金 1,500円
商品 500円
負債 1,000円
資本金 1,000円

その後、会社は商品を800円で販売します。販売すると現金が800円入ることになります。つまり、商品500円がなくなり、その代わりに現金となります。また、500円のものを800円で販売で売ったので、利益が300円入ります。この利益分は、現金として資産に計上します。

一方、貸方では、利益分の30円は借りたお金や資本金で払い込まれたお金でもないので、「利益余剰金」という科目で計上します。もし利益ではなく、損失だった場合は、資本金の部分が減少するのでマイナスになります。そして、損益計算書では、売買の動きがあったので、貸借対照表の動きを反映させます。つまり、このようになります。

・貸借対照表

借方 貸方
現金2,300円 負債1,000円
資本金1,000円
利益300円

・損益計算書

売上高 800円
原価 500円
当期純利益 300円

このように貸借対照表の過去の利益や損失が、損益計算書の売買結果へと反映されていきます。

貸借対照表と損益計算書のビジネスの流れとは?

事業を運営していく上で、お金の流れを把握するためには、貸借対照表と損益計算書が欠かせません。貸借対照表では資金をどのように調達し、その資金をどのように事業に投資したか、を把握できます。損益計算書では、事業活動の利益を把握することができます。

では、どのようなタイミングで両者はビジネスに影響を与えるのでしょうか?まず年度の最初の「期首」の資産を元手とし、時間の経過とともに収益と費用が計上されていきます。そして、年度の最後の「期末」の資産に、利益と損失が影響を与えます。

この最初の日である期首と、最後の日である期末の期間は、年度、つまり、1年という決まりはありません。冒頭でも少し触れましたが、「四半期(3ヶ月)」「半期(6ヶ月)」の企業もあれば、「1ヶ月」ごと、つまり、毎月、作成する企業もあります。

貸借対照表の期首の状態

1ヵ月、四半期、半期、年度など、どれだけのサイクルに設定するにしても、期首の貸借対照表の状態で、今後のお金のやりくりを考える必要があります。つまり、期首の貸借対照表には、調達したお金の状態を貸借対照表の資産の部、また、どのように資金を調達したかを貸借対照表の負債と純資産の部に計上してある状態にします。この期首のお金の状態をもとに、期中の事業活動を考えることができるのです。

損益計算書の期中の状態

会社の事業を把握するためには、損益計算書の状態から確認できます。期中であれば、収益だけでなく、費用も積み重なっているはずです。売上があれば収益が伸びますし、お金を使えば費用が伸びています。すべてが同時に生じるわけではないので、タイミングによっては収益、もしくは費用のどちらかが上回っていることもあります。

そこで、ある程度の期間で区切り、合計を確認することで、ビジネスの利益を把握しやすくなります。なお、ビジネスの利益には、「売上総利益(粗利益)」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5種類あります。

本業(営業)のビジネスで得た利益か、もしくはそれ以外の利益(営業外)なのか、いつも生じる(経常)なのか、それとも稀(特別)に生じる利益なのか、という観点から分類します。そして、「当期純利益」が貸借対照表と関連性のある、税金を差し引いた最終的な利益となります。

貸借対照表の期末の状態

どんなサイクルにも「期末」があります。期末を確認するために、貸借対照表の期首と期末を比較します。比較することで、ビジネスがどのように会社の資産に影響を与えたか、を確認することができます。

ビジネスの結果とは、損益計算書で計上された「当期純利益」のことです。期末の貸借対照表では、純資産である利益過剰金に「繰越利益剰余金」として計上されます。繰越利益剰余金は、利益が出ると当期純利益がプラスになりますが、損失が出ると当期純利益はマイナスとなります。

まず利益が出る場合は、当期純利益が繰越利益剰余金に移動し、純資産が増加することになります。純資産が利益で増えるなら、資産も増加するため会社が成長したことを読み取ることができます。

それとは逆に、当期純利益がマイナスの場合は、繰越利益剰余金が損失を補う必要があるため、純資産が減少します。つまり、収益が費用を上回ったため損失が発生し、純資産が減ってしまうということです。したがって、資産もバランスをとるように減少するため、会社の資産が減少、つまり縮小したことになります。

このように貸借対照表と損益計算書は、全く別の書類ではなく、お互いに影響を与え合う関係があるのです。そして、これらの財務諸表は、お互いの関係性を数値で表現しています。両者の関係性を理解するなら、一目で会社の状態を把握することができるでしょう。

まとめ

貸借対照表と損益計算書は、決算書の書類として作成されるとても重要な書類のひとつです。両者は全く異なるようにみえますが、実は深い関連性があることについてみてきました。貸借対照表は「ある時点」における会社の財政状態を表し、損益計算書ではそれを反映した「ある一定期間」の会社の収益と費用を表しています。

貸借対照表も損益計算書も、会社の財務状況を示す重要な決算書なので、正しいものを作成するようにしましょう。そのためには、日々の経理処理を正確に行う必要があります。どんなに注意していても、ミスをしてしまうことは誰にでもあります。貸借対照表と損益計算書の「利益」の金額は必ず一致するものですが、もし金額が一致しなかった場合は、仕訳帳や総勘定元帳などを参考にしながら、間違いの箇所を見つけて原因を突き止めるようにしましょう。

貸借対照表がどのようなものであるか、また、損益計算書との関連性を理解することは、スムーズな作業にもつながります。会計ソフトやExcelなどを利用すれば、効率よく作業を進めることができるでしょう。また、専門家である税理士に経理のサポートを依頼することもひとつの方法です。自身の事業運営に一番最適な方法を見つけて、健全な運営をしていきましょう。

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