2020年4月2日

資産除去債務とは?超初心者でも概要や仕訳方法が分かるよう解説!

みなさんは「資産除去債務」という勘定科目を聞いたことがおありですか?経理担当者の方だとしても、聞いたことがない方がいるかもしれません。あまり使用する機会がない勘定科目ですが、いざという時に必要となる勘定科目です。この記事では、超初心者の方でも、資産除去債務を見かけたときに理解できるようその概要や仕訳方法について分かりやすく解説していきます。

資産除去債務とは?

資産除去債務という言葉を聞くと、資産なのか?それとも負債なのか?と分かりにくいですが、実は「負債」のひとつです。そもそも負債とは、将来の支出をあらわすことを性質として持っています。財務会計基準の規定をざっくりまとめると、資産除去債務とは、有形固定資産の雇用年数が過ぎて処理をするときに経費が必要になることが分かっている場合は、その資産を購入した時点で、処理するときにかかる費用も計上すること、ということになります。

つまり、将来発生すると思われる資産の除去(解体や撤去など)にかかる費用を見積り、その見積額を「資産除去債務」という勘定科目を使って会計処理をするということです。現時点では、将来的にどのくらい費用が発生するかを予想することは難しいため、見積りを完璧に行うことには限界があります。したがって、資産除去債務は、特殊な会計処理をする必要があります。

資産除去債務の対象となる有形固定資産とは?

では、資産除去債務の処理が必要となる有形固定資産とは、どのようなものが対象となるのでしょうか?具体的には、建物の解体や修繕費用、アスベスト除去費用などが挙げられます。では、2つの具体的な例をご紹介しましょう。

ケース1:小売業の資産除去債務
例えば、事業を開くために、土地を借りると仮定します。土地を借りた後は、店舗や事務所となる建物を設置することでしょう。通常、土地の賃借契約では、土地を返すときは元の状態に戻して返すことが、「原状回復義務」という法律で規定されています。したがって、将来、土地を返すときには、設置した建物や事務所などを解体や撤去するための費用が必要となります。この将来建物を除去するための費用が「資産除去」になります。

土地を賃借した際、契約をした時点で将来支出があることがあらかじめ分かっているため、将来の支出を現在の価値に直して「資産除去債務」として処理することができます。このように、将来、有形固定資産を除去するためにかかる費用を見積もった見積額を「資産除去債務」と言います。なお、これは法律や契約で要求されている義務です。しかし、すべての有形固定資産の除去が義務づけられているわけではありません。

ケース2:アスベストに関する資産除去債務
アスベストも資産除去債務のひとつです。アスベストは建材に使われていた物質ですが、健康被害があることで知られています。したがって、法律では、建物を除去する際にはアスベストを除去することが義務づけられています。アスベストを使用しているなら、企業は将来の除去費用を調整して見積額を算出し、「資産除去債務」として負債に計上する必要があります。

資産除去債務の計算方法について

では、負債の勘定科目として計上する資産除去債務は、どのようにその金額を算出すればよいのでしょうか?先述した「原状回復義務」として規定されている場合、それに基づいて支払いが必要になる費用のことを「原状回復費用」といいます。つまり、資産除去債務とは、原状回復契約に基づいて行われる契約をしたときに義務付けられています。したがって、原状回復費と減価償却費が、資産除去債務に大きくかかわってきます。

原状回復費用の見積もりはどこへ?

資産除去債務として計上する資産を取得した場合、負債として見積額を算出する必要があります。この見積額は、「原状回復費」の見積もりです。原状回復費の見積もり額は、原状回復費の見積もりを担当している業者へ依頼することが一般的です。例えば、土地を借りた場合は、契約をした不動産会社へ依頼することができるでしょう。

原状回復費用を現在価値に割引く「割引計算」

原状回復費の見積もりは、将来必要となる債務除去費用です。そのため、特殊な計算方法が必要となります。それは、原状回復費から現在価値を割引いて計算する「割引計算」という会計処理です。

では、1つの具体例をみてみましょう。見積りを依頼したら、10年後の見積額が100万円になったと仮定します。そこに利率2%で利息2万円で計算すると、将来必要になる100万円の現在価値は80万円という計算になります。なぜなら、毎年発生する2万円の利息が10年間発生することで20万円マイナスとなるため、現在価値が80万円になります。このように現在回復費用は、現在価値へと戻す「割引計算」を使って算出します。

減価償却費の計算方法

原状回復費用の見積額から現在価値を算出したように、減価償却費も「割引計算」で算出します。減価償却費の場合は、有形固定資産の「耐用年数」を使って割引計算をします。

消費税などの税金の処理法は?

資産除去債務では、消費税などの税金の会計処理は不要です。なぜなら、資産除去債務は、消費税がかかる課税取引の対象外だからです。また、仕入れた際には、消費税などの税金が控除される「仕入税控除」という制度が適用されます。ただし、実際に除去や退去する際の工事費用には、消費税が課税されますので注意してください。

資産除去債務の仕訳方法について

続いて、資産除去債務の仕訳方法についてみていきましょう。まず、有形固定資産を取得したときに会計処理が必要となります。例えば、有形固定資産500万円で購入したと仮定します。この有形固定資産は事業用の機械で、使用期間(耐用年数)は2年間、見積額は100万円です。(利息費用としての利率は2%)その場合、次のように仕訳をすることができます。

借方
貸方
機械装置 596万円 現金 500万円
資産除去債務 96万円

前述したように、将来価格を現在価値に戻すため、有形固定資産(機械装置)は596万円と処理します。そして、貸方は現金で500万円、資産除去債務に96万円と計上します。

・差額が生じた場合
有形固定資産を実際に除去した後、実際の資産除去債務として計上した費用と差額が生じることもあります。例えば、当初見積額として想定していた額は104万円でしたが、実際にかかった費用は110万円でした。この場合、6万円を差額として多く計上した処理をする必要があります。

借方 貸方
資産除去債務 104万円 現金 110万円
履行差額 6万円

このように会計処理に差額が生じたときは、「履行差額」という勘定科目を使って計上します。

・決算期末の仕訳
決算日までの会計処理は、主に「資産除去債務」「減価償却費」「利息費用」の3つの勘定科目を使って会計処理を行います。まず、減価償却費を算出します。先ほどの例でもう一度考えてみましょう。減価償却費は596万円になります。耐用年数は2年、つまり、2年で減価償却をするため「596÷2=298」となり、減価償却費は298万円となります。仕訳は次のようになります。

借方 貸方
減価償却費 298万円 減価償却費累計 298万円
利息費用 2万円 資産除去債務 2万円

このような仕訳を、2年目も行います。

資産除去債務が与える利益には影響はあるの?

では、資産除去債務は、利益にどのような影響を与えるのでしょうか?

資産除去債務は毎年の費用になる

資産除去債務は、将来の支出をあらわす勘定科目です。つまり、将来のいつかの時点で、その支出が必ず発生することになります。しかし、いつかの時点とは、将来支出が行われるときではありません。

将来、有形固定資産を除去するためにかかる金額(費用)を、その有形固定資産を使用している期間(耐用年数の間)に少しずつ支払う、つまり、費用として計上していくことになります。したがって、どこかの年に、膨大な費用が発生することはないので、事業の利益が大きく激減する心配もありません。

減価償却の仕組みで費用として計上

資産除去債務も、減価償却費と同じように、毎年の費用として計上することになります。会計には、資産除去債務を負債に計上すると、その同じタイミングで、同じ金額だけ有形固定資産の金額が増える、というルールがあります。つまり、資産が増えるということです。

資産除去債務を計上することで有形固定資産が増え、減価償却費として計上することで、費用になるということです。このように減価償却費の仕組みを理解すると、資産除去債務が耐用年数に応じて、何年もかけて費用へとなっていくことも理解できるでしょう。

まとめ

資産除去債務は、負債として扱われる勘定科目です。しかし、資産と負債が同時に出てくるため、特殊な仕訳方法が導入されています。資産除去債務という勘定科目は、あまり登場することがありませんが、経営者や経理担当者であれば、知っておきたい基礎知識のひとつです。

決算書では貸借対照表の右側の貸方である負債の欄へ記入し、数年(耐用年数)かけて毎年の費用として計上します。このような考え方は、日本の簿記の考え方ではありませんが、国際会計基準で決められているルールです。有形固定資産を除去するときに、一気に費用がかさむことを抑えられるというメリットもあるので、是非、資産除去債務の会計処理について覚えておきましょう。

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