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【農家さん必見】 農業簿記とは?農業経営で欠かせない農業簿記の基礎知識

2020年7月15日
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経理をしている方にお馴染みの簿記には、さまざまな種類があることをご存じでしたか?その中のひとつ「農業簿記」は、農業を営んでいる方が農業経営をする上で必要な会計の手法です。一般的な簿記とは異なるため、農業を営んでいる方は、農業簿記の基礎知識を取得することは必須です。

この記事では、一般的な簿記と農業簿記との違いや農業簿記の取得方法など、農業簿記の基礎知識について解説していきます。

簿記の種類

商業高校を出身の方や経理の方であれば、簿記の種類をご存知のことでしょう。簿記には、全部で5つの種類が存在しています。それは「商業簿記」「工業簿記」「建設業簿記」「銀行簿記」「農業簿記」です。一般的な企業や店舗などで広く使用されている会計処理、つまり一般的な簿記は商業簿記のことです。

今回は5つの種類の簿記の中でも、農業簿記にスポットをあて解説していきます。では、さっそくみていきましょう。

農業簿記とは?

農業簿記とは、農業経営で会計処理をする手法のひとつです。商品の販売からはじまり、製造まで行うため工業簿記に似た性質をもっています。農業簿記の最大な特徴は、実践的な原価計算や生産している作物の種類ごとに会計処理を行うという点を挙げることができます。

農業簿記をつける対象者とは?

農業簿記を使用する対象者は、個人事業主として農業経営をし農業所得を得ている農家さんや、農業法人などが挙げられます。農産物の品目や種類を問わず、農産物を生産し販売している事業主さんであれば、農業簿記で会計処理をすることになります。農家さんの中には、事業である農業と家計が混同しやすい方が多いため、農業簿記をつけて、家計と農業をしっかり区別することはとても重要です。

一般的な簿記と農業簿記の違いとは?

一般的な簿記、つまり商業簿記と農業簿記には、どのような違いがあるのでしょうか?いくつかの相違点をみていきましょう。

①農業簿記には農業特有の専用勘定科目がある

農業簿記には、一般的な簿記では利用しない農業特有の専用勘定科目があります。すべてをご紹介することはできませんが、農業簿記で使用されている専用勘定科目には、次のようなものがあります。

種苗費:種子や苗、種いもなどの購入費用

素畜費:育成牛や子豚の購入費用や引取り運賃

肥料費:肥料の費用

飼料費:飼料や飼料添加物の費用

自給飼料費:時価で生産や収穫した米以外の穀類の費用

農具費:バケツ、スコップ、ほうき、ホーク、小農器具(取得額が10万円未満の農機具)など農作業に使用する農具費用

農薬衛生費:農薬、家畜薬、共同防除経費、獣医の治療代、予防代など

動力光熱費:農業機械や車輌のために購入した軽油やガソリンなどの費用

諸材料費:農畜産物の精算に必要な敷料やビニールなどの消耗資材費用

修繕費:農業機械、車両、作業場、倉庫、畜舎などの修理にかかる費用や、ビニールハウスのビニール張替え費用など

作業用衣料費:農作業用医療、長靴、防止、合羽などの購入費

農業共済掛金:水稲、家畜、温室などの共済掛金、農業資産に対する火災保険料、車両の保険料など

減価償却費:農用建物、建築物、機械、車両、成牛などの固定資産の減価償却費

荷造運賃手数料:生産物の販売のために使用した袋、箱、段ボールなどの購入費、販売にかかった市場手数料、農業手数料、運送費、検査料、仲介料、紹介料など

雇人費:農業の生産や販売のために労働者を雇用したときの雇用労賃

貸借料:ライスセンター、トラクターなどの使用料や貸借料、家賃など

地代:農地への貸借料

小作料:小作地の使用料金

土地改良費:水田や畑などの区画整理など土地改良にかかった負担金額

②棚卸の方法

毎年会計年度末になると、どこの企業や店舗でも「棚卸」作業が行われます。棚卸とは、自社の手元に残っている資産や在庫の確認をし、その金額を計算して帳簿に付けを行う作業のことです。一般的な簿記である商業簿記の場合は、商品などのモノを売買する事業を前提としているため、「商品」という勘定科目を棚卸の際には利用します。

一方、農業簿記においては、生産資材や収穫前後の農産物など、さまざまな種類の在庫を抱えているため、種類ごとに分類して棚卸しをする必要があります。
農業簿記の棚卸しでは、次の4つの種類に分類して帳簿付けが行われます。

・農産物
農産物とは、販売目的で生産した物品のことです。収穫済みの農産物で、未販売で在庫として抱えているものが該当します。

・仕掛品
仕掛品とは、農産物を生産するために栽培しているものや育成中の物品のことです。栽培中や未収穫の農産物や、販売目的で飼育している動物などが該当します。

・原材料
原材料とは、生産目的せ費消される物品のことです。種子や肥料、資料、農薬などが該当します。

・貯蔵品
貯蔵品とは、生産や販売目的以外の用途で貯蔵されている物品のことです。燃料や包装材料、収入印紙などが該当します。

③生物(果樹・牧畜)資産の管理方法

農業簿記では、搾乳牛や繁殖豚、成熟した果樹など、生産活動を行っている状態の家畜や果樹は、固定資産として原価償却として会計処理を行います。その際、「生物」という勘定科目を使います。生物として分類する家畜や果樹には、生産活動を始めるまでに要した育成費用の合計金額を、固定資産の取得価額とし会計処理します。

この会計処理をするために、毎年年度末には、育成期間中の家畜や果樹にかかった飼料費や肥料になどを「育成仮勘定」と呼ばれる勘定科目に総計を振り替える処理をする必要があります。また、年度中に生産活動をはじめた家畜や果樹に関しては、「育成仮勘定」から「生物」勘定科目へと切り替え、固定資産として原価償却の対象として扱う必要があります。

④確定申告用紙の書式

農業を営む方が個人事業主として確定申告をする場合、農業専用の確定申告書類様式で申告を行います。農業で取得した農業所得は、それ以外の所得と区分して売上や経費を記載していく必要があります。

農業所得の確定申告方法

農業事業で農業所得を獲得した場合は、青色申告もしくは白色申告で手続きを行います。青色申告の場合は貸借対照表と損益計算書を添付する様式、白色申告の場合は収益内訳書を添付する様式、という点では、通常の確定申告と同じです。

しかし、確定申告書に添付する貸借対照表と損益計算書、また収益内訳書に関しては、農業所得専用の様式が用意されています。ですから、農業所得のある方は、農業所得専用の確定申告様式を使用するようにしましょう。なお、確定申告書類には、「収入金額等」の欄に所得の種類が記載されています。

農業所得は、「事業」所得の「農業」の項目に該当します。つまり、事業を営むことで生じる所得として記載します。農業を含む事業所得の場合は、事業を営む上でさまざまな経費が発生しています。したがって、売上から必要な経費を差引いた金額が、事業所得となります。

青色申告の方法

農業取得は事業所得のひとつなので、青色申告で確定申告をすることができます。青色申告をする場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を事前に提出し、青色申告での申告許可を得ておかなければいけません。

なお、青色申告にしたい場合は申告を行う年の3月15日まで、新たに事業を始めた場合は事業を始めた3ヶ月以内まで、に書類を提出する必要があります。期限が決まっていますので、その期限以内に提出を忘れずに行いましょう。期限内に申請書を提出しなかった場合は、その年度は自動的に白色申告になります。

・青色申告特別控除を受けるための注意点
農業所得で青色申告特別控除を受けるためには、正規の簿記の原則に基づき、決算書類である貸借対照表と損益計算書を作成できる帳簿で記載する必要があるうえ、複式簿記で記帳することが条件となっています。

・農産物受払帳について
青色申告では、農産物受払帳について記載します。農産物受払帳は、農業所得のみが記載すべきものです。現金出納帳や売掛帳などでも所得を確認することができますが、記載するにあたっては一部簡略化することが認められています。

具体的には、収穫に関しては穀類以外は省略可することが可能です。穀類に関しても数量のみ記載するだけで問題ありません。販売に関しては、穀類以外の販売の記載をする必要がありますが、数量や単価が分からない場合は金額のみの記載が認められています。家事消費に関しては、改定で農作物などを消費した場合は、年末に一括で記載することが可能となっています。

白色申告の方法

白色申告は、青色申告よりも簡易な様式となっています。収入と経費で簡易な記帳が認められているので、分かりやすく必要事項を記載すれば問題ありません。

・収穫について
白色申告では、農作物の収穫に関しては、穀物以外の収穫物の記載は不要です。ただし、穀物の収穫に関しては、収穫した日付と種類、数量を記載する必要があります。

・売上や消費について
売上や収穫した農作物を消費した場合は、取引を行った日付、相手方、金額などを記載しなければいけません。取引ごとに記載することが原則とされていますが、金額が少額の場合や請求書などで請求額を確認することが可能な場合は、一括で記載することができます。

なお、農産物を生産している場合、売れ残り物品を家庭で消費することが一般的です。そのように家事消費をした場合は、年末に一括で処理することが認められています。

・事業に関する費用について
事業にかかった費用を記載する場合は、経費を区分したうえで、取引した日付、支払先、金額などを記載します。

・未収穫の農産物、未成熟の畜産物について
農業の場合、収穫や出荷までにはある程度の時間を必要とするため、実際に収入となる期間が考慮されています。つまり、月末に経費を整理することが認められています。

農業簿記資格取得を目指して農業簿記の知識を深めよう!

農業簿記は、農家を営んでいる自営業の方や農協の職員はもちろんのこと、農業に直接関わっていなくても経理に興味のある方や、税理士事務所に勤めている方などにも役立つおすすめの資格のひとつです。農家の案件も扱うことができるなら、活躍できる場を広げることができるでしょう。

なお、農業簿記資格試験では、商業簿記と工業簿記の基本的な知識も求められています。しかし、日本ビジネス技能検定協会が実施する「農業簿記検定試験」は、日商簿記と比較すると、そこまで難易度は高くないと言われています。とはいえ、農業独特の勘定科目などが試験に出題されるため、当然のことですが、ある程度の試験勉強は必要となります。

農業簿記資格試験の概要

資格名:農業簿記検定試験1級・2級・3級

資格の種類:民間検定試験

主催団体:一般財団法人 日本ビジネス技能検定協会

受験資格:学歴や年齢、国籍など問わず、誰でも受験することが可能

試験方法:マークシートを利用した多肢選択方式

試験スケジュール:年に2回(1回目:7月の第1日曜日/2回目:11月の第4日曜日)

受験料:1級:4,000円、2級:2,000円。3級:1,500円

資格の概要:農業簿記検定は、日本ビジネス技能検定協会が2014年4月から実施している検定試験です。複式簿記を基礎とした農業簿記を理解し、スキルを習得していることを目的としています。農業簿記資格取得を目指すことで、農業経営者に欠かすことができない財務や会計についての知識を深めることができます。

また、農業簿記の場合、一般的な業種と比較すると保有する資産の種類が多く、生産種類の作物も多いため、農業経営には農業専門の特有の知識や勘定科目など習得すべきことがたくさん求められています。日商簿記とは違い、勘定科目の語句問題も出題されますので、ひとつひとつの勘定科目についてしっかり理解しておきましょう。

まとめ

農業簿記は、農業で所得を得ている方が会計処理をする手法のことです。農業簿記には、農業ならではの専門勘定科目があるため、農業簿記の知識やスキルを身に着ける必要があります。しかし、帳簿付けに専念するあまり、本業の農作業に集中できなくなってしまうなら、事業に大きな影響を及ぼします。

そこで、事業に集中するために、会計処理を税理士にお任せするのもひとつの方法です。税理士コンシェルジュの税理士紹介サービス『全国税理士紹介相談所』では、あなたにピッタリの税理士を無料でご紹介しています。まずはご相談からどうぞ!


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